54話 クジラの次はタンポポの話題なのです。
【毎日昼の12時に更新します】
この作品には以降のストックがありません。
そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。
すみませんが、よろしくお願いいたします。
この物語は毎話毎話が短いです。
それは4コマ漫画のようなテンポの良さ、余韻を全面に打ち出しているからです。
……決して、私の手抜きではありません。
……きっと。
「……お前はなにを言ってるんだ?」
俺は真顔で問うた。
だってそうだろう?
恵ちゃんと呂姫ちゃんは神力の話をしていて、俺はそれに対しての推測を伝えたのだ。
風呂場の中での会話だ。
反響して一部の単語が別の言葉に聞こえて勘違いするなんてことならあり得る。
だがまったくしてもいないクジラの話を言ってくる新井に大いなる疑問を感じたのだ。
「え? クジラの話でしょ?
マッコウクジラが千メートル以上潜水できる話を辻神さんがしたのが最初だったよね?」
「……な、なんだって?」
俺は絶句した。
だが同時に理解した。
これは神力の影響なのだろう。
女神が、自分たちの存在がバレないように神力を使って、新井には会話を全く違う内容の話に聞こえるように神力を行使したに違いない。
でもおそらくたぶん恵ちゃんの方ではない。
呂姫ちゃんだろう。
恵ちゃんの神力は新井には効きづらいと言っていたから、呂姫ちゃんの神力の影響だろう。
……おそるべき神力。
「神子恵。あなたが使った神力だと当初は慎一くんがこの風呂場に眠くなって来ない。
そこにつけ込んであなたが二人きりで加茂くんとお風呂に入ろうとしてたって訳ね?」
「違いますっ。私はこのお風呂に来る予定はありませんでしたっ」
呂姫ちゃんの問いを恵ちゃんが否定する。
そこで俺は試しにきょとんとしている新井に質問してみた。
「今の恵ちゃんと呂姫ちゃんの会話をどう思う?」
「え? セイヨウタンポポが増えたことでニホンタンポポが減っちゃったって話でしょ?
僕にはどっちがどっちか見分けがつかないけど、そういうこともあるんだなあって感心したよ」
……なんてことだ。
今度はタンポポの話題だと思いこんでいる。
間違いなく神力の影響だろう。
だったら新井がいても二人の会話はまったく問題がないし、俺が口を挟んでも無問題だということがわかり、安心する。
「――じゃあ、なんで神子恵がこのお風呂場にいるのよ?」
「それは呂姫ちゃんが私の計画を邪魔したからです」
そこで恵ちゃんは、予てから行っていた俺のハーレム計画を説明した。
少子化対策に子宝の神としてなんとかしたいと思っていたところに、俺が参拝したので氏子にしてハーレム化しようとあれこれ画策したことだ。
画策の詳細として、クラス編成を弄って澤井さんと河合さんという学年一、二の美少女を含めランキング上位の女子をすべて一年二組に入れさせたことまで暴露していた。
俺は聞かされていなかったが、担任も若くて美人の若杉先生と言うのも仕組んだようだ。
そしてこの研修での班編成でも、澤井さん、河合さんを巻き込み、俺以外すべて女子の班だとあからさまなので、人畜無害で平凡な新井慎一を他の男もいますよとの言い訳としてとして混ぜたらしい……。
そこまで聞いた呂姫ちゃんは、恵ちゃんの用意周到さに感服した様子だった。
「はう。……なにをするんですかっ?」
話を聞き終えた俺は、当然のように恵ちゃんに手刀を落とした。
恵ちゃんは涙目で抗議する。
「明らかにやり過ぎだ。過剰なほどの仕込みだ。
俺にいったいなにをさせるつもりなんだ?」
「決まってるじゃないですか、子沢山計画ですよっ!」
俺はもう一度手刀を落とそうとした。
それを恵ちゃんが両手をクロスさせて防ごうとする。
そんなときだった。
呂姫ちゃんが、ああっ! といきなり大きな声を出したのだ。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。