528話 最後はアツメルコなのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
「そんな……。麻痺魔法が効かないわ」
そうだった。
スケルトン・ナイトは大盾に身を隠していたのだ。
ロキの麻痺魔法は対象となる相手の姿全体を捉えていないと発動しない。なのでスケルトン・ナイトは盾で姿が見えないようにしたのであった。
なかなか知恵の回るヤツだ。
「小癪だわ。……ならば、ほにゃら!」
ロキは今度は炎弾の魔法を唱えた。すると錫杖の先端に大きな炎の弾が生成され、次の瞬間には勢いよく発射されるのであった。
――ガガーンッ!
激しい衝突音と爆風があたりを支配した。
だが、次の瞬間、思わぬ展開となった。
「きゃあーっ……!」
見えたのは、ドガッという衝撃音とともに、ぶっ飛ばされて宙を飛ぶロキの姿だった。やがてロキは壁に激突してしまい動けなくなる。
あの勢いだ。相当のダメージが負ったのは間違いない。なのでロキの負けだろう。
「……や、やられたわ。まさか炎弾が効かないだけじゃなくて、盾で攻撃してくるとは思わなかったわ……」
そうなのだ。
スケルトン・ナイトは盾で炎弾を防ぎ、その後、全力で接近し、大盾でロキをかち上げるようにして打撃し、ぶっ飛ばしたのだ。あれはたぶんシールドバッシュという技だろう。
「残るはアツメルコか。頼むぞ」
「ふぉふぉふぉ。儂が最後の選手じゃのう。まあ、なんとかなるじゃろう」
闘志あふれるには程遠く、淡々とした態度で大盾のスケルトン・ナイトの前に出たのは最後のひとりであるアツメルコであった。
(……だが、どうする気だ?)
俺は心の中で思った。
アツメルコの武器は硬貨を弾くことだ。あの大盾に通用するとは思えない。なんせロキの炎弾を防ぐほどの盾なのだ。
「じゃあ、やるかのう。――ふぉふぉふぉ」
アツメルコは両手に持った硬貨2枚を指で弾いた。すると唸りを上げて一直線に飛んだ硬貨はスケルトン・ナイトに接近する。
――ガキンッ! ガキンッ!
だが、予想通りに弾かれた。しかし硬貨の威力は予想以上で盾を身構えたスケルトン・ナイトが後退りをしたのだ。
「ふぉふぉふぉ。これならなんとかなるのう」
アツメルコは余裕の笑みを見せた。その整った顔の口元をわずかに歪めたのだ。おそらく自分の硬貨弾きの威力に手応えを感じたのだろう。
そして改めてアツメルコは左右の手に銀貨をつまみ、前へと突き出す。
「――ふぉふぉふぉ」
アツメルコは硬貨を弾いた。唸りを上げて硬貨は宙を飛ぶ。見るとスケルト・ナイトはやはり大盾を構えて身をその後ろに隠しているのがわかる。
そのときだった。盾にぶつかると思えた硬貨がギュイーンと飛ぶ方向を変えて左右に大きく曲がったのだ。
そして盾を左右から躱す形でその後ろに隠れるスケルト・ナイトの顔面付近にぶつかるのであった。
――ガキンッ! ガキンッ!
命中音が響く。
そして次の瞬間には盾もスケルト・ナイトも光の粒となって消滅してしまったのだ。おそらく銀貨に頭蓋骨を粉砕されたのだろう。
「まるで変化球だな」
「そうですねっ。まさかコインが曲がって飛ぶとは思いませんでしたっ」
「でも、これで私たちの勝利ね」
「ふぉふぉふぉ。見事に決まってくれたのう」
最終勝利者であるアツメルコは両手を腰に添えて高らかに笑い声を上げるのであった。
最後のスケルト・ナイトを倒したのです。(`・ω・´)∩
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