519話 上位種が登場したのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
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それからも一定間隔で俺たちは魔物に襲われた。そしてそのすべてがスケルトンであった。どうやらここいら一帯はスケルトンの巣窟のようだ。
「なんか倒すのも飽きてきた感じだな」
「そうですねっ。もうこうなるとたんなる作業に過ぎませんっ」
そうなのだ。
スケルトンは見た目こそ怖気を誘う外見だが、それほど強さはない。骨の手を振り回して攻撃してくるだけだからでスピードもさほどないので避けるのも容易い。
「……でもじゃあ、そんなスケルトンになぜ馬車の護衛の兵士たちは倒されてしまったのかしら?」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃのう。仮にも王族の護衛を務める兵士じゃ。弱いことはなかろう」
なるほど。言われてみればそうだ。
王族の護衛なのだから、ただの兵士ってことはないだろう。確か近衛兵と呼ばれる精鋭の部隊が請け負うはずだ。
俺たちはそのことの正しいと思われる回答が浮かばなかった。あれやこれや意見を言い合ったのだが、どうかんがえても近衛兵の集団がスケルトンに負けるのか納得がいかなかったのだ。
「やっぱり近衛兵たちが弱かったんじゃないですかっ」
「それとも数百ものスケルトンの大群が襲って来たとかかしら?」
こんな感じで堂々巡りしてしまうのだ。
だが、次に出現したスケルトンの群れを見たときに俺たちは即座に納得がいくのであった。
「あれが答えなのか……」
「きっとそうですっ。まさか上位種だとは思いつきませんでしたっ」
「なるほどね。あれが群れで現れたら近衛兵でも太刀打ちできなかったかもしれないわ」
「ふぉふぉふぉ。まさかのスケルトン・ウォーリアーとはのお」
そうだった。
道の先から隊列を組んで登場したのはスケルトンの上位種であるスケルトン・ウォーリアーだったのだ。
ウォーリアーは剣と盾を持ち金属鎧に身を固めたスケルトンの戦士である。武器を持っているだけじゃなく、動きも力強さもただのスケルトンとは比較にならないくらい強いのだ。
「数は5匹か。……このまま遠距離で叩くか」
俺は作戦を提案した。この道はほぼ直線で見通しが良い。そして距離もある。だからなにも接近戦で切り合い叩き合いをする危険を犯す必要はないからだ。
「そうですねっ。じゃあ、攻撃します。――ほいっ!」
メグミが長杖を伸ばした。すると杖の先端に雷球が生まれ、そこから稲妻が発射される。
「じゃあ、私もやるわよ。――ほにゃらっ!」
ロキが錫杖で敵に狙いを定めると先端に炎が生まれる。それが人の背丈ほどの大きさになるとその炎弾をスケルトン・ウォーリアーに向けた放つ。
「ふぉふぉふぉ。儂も参加するかのう。――ふぉふぉふぉ」
アツメルコが両手を伸ばす。そして左右の親指に挟んだ銀貨を勢いよく飛ばす。
――バリバリバリ!
――ドッゴーン!
――グヮシャッ!
命中したそれぞれの攻撃の派手な音が聞こえてきた。
爆発に伴う煙が晴れるとスケルトン・ウォーリアーの生き残り(アンデッドなので生きているとは言えないが……)が2匹立っていた。
「「ギギギギギ」」
かなりいきり立っているようなのが、骸骨の顔を見ていてもわかる。仲間が瞬殺されて怒り心頭ってところなのだろう。
それまで小走りだったのが全力疾走で俺たちの方へと向かって来るのがわかる。
「2匹残しちまったな。どうする? 俺が倒そうか?」
「ダイキチの手を煩わせることはありませんっ。私がやりますっ。――ほいっ!」
一撃で倒せなかったのが満足ではなかったようでメグミが他のメンバーの許可も取らずに稲妻を発射させた。
――バリバリバリ!
途中に2つに別れた稲妻がそれぞれのスケルトン・ウォーリアーを捉えて瞬時に黒焦げにするのが見えた。
「やっぱりお前たちは規格外だな」
俺は銀貨を拾いに歩き出した。するとメグミもロキもアツメルコも着いてくる。
そうなのだ。
本来、スケルトン・ウォーリアーはかなりの強敵なのだ。俺が”賢者の斧”を手にして一対一で戦った場合、5、6回クリーンヒットを与えないと倒せないくらいは強い。
なのでスケルトン・ウォーリアーの大群に囲まれたことで、王女様の護衛たちがみんな倒されてしまったのが真実だろう。
それに対して俺たちは4人パーティの中に、本来このゲーム世界では存在しない”神”が三柱もいるのだ。
そして彼女らの魔法はこの世界では存在しない神力が元になっている強力な攻撃魔法だ。なのでさすがのスケルトン・ウォーリアーも鎧袖一触で倒せてしまったという訳であった。
スケルトン・ウォーリアーの登場なのです。
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