514話 行き先は異空間なのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
「お、おい! どうすんだ? 恵ちゃんが食われちまったぞ」
俺は慌てて呂姫ちゃんを見る。
だが、呂姫ちゃんは余裕の笑みを見せている。
「ふぉふぉふぉ。異空間じゃのう」
「異空間? 恵ちゃんは異空間に飛ばされたのか?」
「そうね。正解。キメラっ子は敵認定した対象を異空間に幽閉することができるのよ。それで外敵を排除するってことなの」
なるほど。
どうやらこの守護獣キメラっ子は敵を殺害するのではなく、捕らえて閉じ込める方法で呂姫ちゃんの部屋を守っているのだろう。
理屈はわかった。
「理屈はわかった。なので、恵ちゃんを解放してくれ」
「わかったわ。ちょっと待っててね」
呂姫ちゃんは畳の上に座っているキメラっ子を抱き上げた。そしてなにやら背中をいじっている。どうやらそこにファスナーがあるようだ。
そしてファスナーが開けられて呂姫ちゃんがその中に手を突っ込んだ。
すると驚いたことに抜いた呂姫ちゃんの手が恵ちゃんの襟首を掴んでいたのだ。
「……驚きました。真っ暗闇の空間に閉じ込められてしまいましたっ」
完全にキメラっ子から出された恵ちゃんが、這々の体っていった感じで畳に両手をつきうなだれていた。
よっぽど精神的に負担がかかったようだ。
「……まさかぬいぐるみの中に異空間があるとはな」
「意外でしょ? 異空間だからほぼ無限大の容量なのよ」
聞けば100人でも200人でも閉じ込められることも可能だそうだ。神力、恐るべしだな。
そして驚かせたお詫びと言って呂姫ちゃんは俺たちに茶を振る舞ってくれた。それはかなり香りの良い紅茶だった。
冷房が効いた室内で飲む温かい紅茶はうまかった。
■
そして俺たちは解散した。
呂姫ちゃんは自室に残り、俺と恵ちゃんは俺の自室、集子ちゃんは集子ちゃんの部屋に戻ったのだ。
それから朝食を済ませ、その後は宿題を片付けたりして時間を過ごすのであった。
そして12時近くになった頃である。
「約束は午後1時からですよねっ。それまでにお昼ご飯を食べておきましょうっ」
「だな。寮の食堂は今日は休みだし、カップ麺でいいか」
「私は醤油味のラーメンがいいですっ」
「じゃあ、俺は大盛りの焼きそばだな」
部屋の作り付けの狭い台所の流しの下から俺たちは保管してあるカップ麺からそれぞれを取り出した。
そしてお湯を沸かすのであった。
そうそう。
午後1時というのは呂姫ちゃん、集子ちゃんとの約束の時間だ。今日も俺の部屋でスピリット・クエストをプレイすることに決まったのだ。
「あ、お湯が湧きましたよっ。私が取ってきますっ」
「ありがとう」
そして俺と恵ちゃんはカップ麺にお湯を注ぎ昼食を済ますのであった。
その後はテレビをのんびりと眺めて時間をつぶす。
そんなことをしていると時間が迫ってきた。
――コンコンコン。
俺の部屋の扉をノックする音がした。
恵ちゃんが応対してくれると、ノックの主はやはり呂姫ちゃんと集子ちゃんだった。ふたりとも時間通りに来てくれたようだ。
そして俺はゲーミングPCを起動させ、スピリット・クエストのアイコンを選択した。すると背後の謎卵が光を放ち、俺たち4人の意識はだんだんと遠ざかっていくのであった。
異空間の中は真っ暗なのです。(`・ω・´)∩
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