513話 守護獣キメラっ子なのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
「……いや、……集子ちゃんの部屋がすごかったからな」
「どんな部屋なのよ?」
「金色の一万円札が天井と壁びっしりに貼られていたんですっ」
そうなのだ。俺と恵ちゃんは隙間なく貼られていた万札の壁紙の様子を詳しく伝える。
すると呂姫ちゃんがドン引きな引きつった顔になった。
「……なにそれ。……悪趣味。……まあ、集子らしいといえばらしいけど」
「ふぉふぉふぉ。個人の趣味じゃ。干渉されたくはないのう」
そんなことを言いながら俺たちは呂姫ちゃんの部屋を更に観察した。するとベッドの上にあるものを見つけたのだ。
それはぬいぐるみだった。ウサギとネコとイヌのぬいぐるみが3つ並んで置かれていたのだ。
「女の子なんですねっ」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃのう。しかも3つもあるとはのう」
「……おい、待て。……なんかおかしいぞ」
そうなのだ。
見た目はふつーの高さ30センチくらいのぬいぐるみだ。フォルムなどウサギ、ネコ、イヌともかわいらしい。だがなんか違和感があるのだ。
「……目だな」
「……そうですね。なんか目が変じゃありませんかっ?」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃのう。なんか目つきが悪いのう」
そうだった。
3匹ともに黒目のぬいぐるみなのだが、目がつり上がっているのだ。そのため顔つきに可愛らしさが感じられない。
「目つきが悪いって、仕方ないじゃない」
「どう、仕方ないんだ?」
俺は思わず呂姫ちゃんに尋ねていた。
すると呂姫ちゃんが3匹のぬいぐるみを抱き上げて顔を俺たちに向ける。
「この子たち、邪神の守護獣なのよ」
「守護獣? なんだそりゃ?」
俺は素直な疑問を口にした。守護というからにはなにかを守るのだろう。だがここは学校の寮だ。特に危険なものがいるとは思えない。
「私の部屋に悪意を持った者が来たら守ってくれるのよ。……そうね、誰か試しに私に暴力を振るう真似をしてくれるかしら」
「わかりましたっ。ならば、私が呂姫ちゃんを殴る振りをしますっ」
すると恵ちゃんが名乗り出て右手で拳を作り呂姫ちゃんを殴ろうとした。
その瞬間だった。
呂姫ちゃんに抱えられていた3匹のぬいぐるみのつり上がった目がギラリと光り、縫製の縫い跡がほどけて、それぞれがごちゃごちゃに合体したのだ。
そして合体したことで大きくなったぬいぐるみが動き出したのだ。その見た目は耳はウサギ、頭部はイヌ、身体がネコといった異質な組み合わせだったのだ。
そう、これはキメラだ。
「これが邪神の守護獣キメラっ子よ」
安易なキメラっ子という名前の守護獣は恵ちゃんにいきなり突進した。
「はわわっ。どうなるのですっ!?」
キメラっ子の勢いに恐れをなしたのか恵ちゃんは後ずさったのだが、キメラっ子はそんな恵ちゃんの態度にはお構いなくその口を大きく開くのであった。
「……うわあっ」
掃除機。
それがいちばんわかりやすい例えだと思った。なぜならば恵ちゃんの小柄な身体はキメラっ子の口の中にスポンと吸い込まれてしまったからだ。
ぬいぐるみは守護獣だったのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。




