504話 石像の中から現れたのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
「「……これは、金尾集の爺さんっ!」」
2人の言葉に俺の記憶も刺激された。
そう、この爺さんは金尾集子ちゃんの元の姿、つまり高利貸しの神のときの姿だったのだ。どうりで見覚えがある訳だ。
集子ちゃんが初登場したのは林間学校のときで、そのときは白いヒゲが長い爺さん姿だった。それを女体化させたのが集子ちゃんなのだ。
以後、女体化が癖になったようでずっと若い少女の姿になっているから元の姿を忘れていたのだ。
「……これはどういう訳でしょうかっ?」
「……わからん。……まあ、この世界を創った秀子ちゃんの企みだろうな」
「そうね。なぜ金尾集の爺さんを大精霊にしたのかは気になるわね」
俺たちは腕組みをしながらそんな会話をしていたときだった。神像、つまり精霊像に変化が起きたのだ。
巨大な石像の足元にヒビが入り、それが上へと伸びていく。辺りにはピシリピシリとしたひび割れる音が響く。
「はわわっ。なにが起きるんですっ?」
「わからん。……まあ用心だけはしておくか」
「そうね。……まさか真のラスボス登場ってことはないわよね?」
俺たちはそれぞれ武器を身構えて石像の様子見を続けた。そして石像だが、ひび割れは頭部まで達し、やがてボロボロと表皮が剥がれ落ちていく。足元には剥がれ落ちた石塊がゴロゴロと転がっている有り様だ。
そして石像がすっかり崩れた。台座の下は瓦礫の山になった。
だが、石像の中心部が残っていた。縦長で立っている形だ。
「あれっ、人の形に見えませんかっ?」
「……そうだな。確かに人の形に見えるな」
そうだった。
薄暗がりではっきりとは見えないのだが、石像が崩れて最後の残った部分が立っている人の姿に見えるのだ。
そんなときだった。
「ふぉふぉふぉ。ふぉふぉふぉ。ふぉふぉふぉ……!」
老人特有の高笑いの声が辺りの空間いっぱいに響いたのだ。「なにごと?」と俺たちは声の元を探るのだが笑い声は反響を繰り返していて居所が掴めない。
「ああっ! あの石像の残りの部分から声がしますっ」
メグミが音の出場所を探り当てたようで、石像の残った部分、つまり人の形に見える残骸を指さしたのだ。
するとその残骸からいきなり両腕がぬっと突き出た。そして首を振るとその身を覆っていた石材の残りカスを振り飛ばし、両足が前へと踏み出し、まるで皮を突き破るかのように身体全体を表したのだ。
どうやら全身が細かい石の欠片で覆われていたようだ。今、それらを払って中から姿を見せた形になったのだ。
「ふぉふぉふぉ。……ようやく自由になれたわい。感謝するぞい」
よく聞けば聞き慣れた爺さん言葉。どうやら間違いないようだ。
「やっぱり、大精霊のお爺さんですっ。金尾集の爺さんの登場ですっ」
「あんた、なんでこんなところにいるのよ。……っていうか、どうしてあんたが大精霊メロロロンなのよ?」
そうなのだ。
ロキの質問は俺も気になっている。いや、たぶんメグミも含めて3人全員の疑問だろう。
「ふぉふぉふぉ。遊戯秀子に頼まれてのう。大精霊役をしておったんじゃよ」
聞けば俺たち3人がこのゲームでプレイを始めた頃に集子ちゃんは秀子ちゃんにゲーム世界での役割を依頼されたそうだ。
そして元がジジイなのだから大精霊向きと提案されたらしい。
……ま、確かにヒゲの爺さんなんだから年を取った創造主役には向いているだろうな。
大精霊メロロロン役の登場なのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。