501話 空中でも躱すのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
「き、来ましたっ。お願いしますっ!」
メグミがそう俺に頼んで身を低くする。俺は中腰のまま右手を前方に突き出して叫ぶ。
「――拘束の投網!」
すると俺の手のひらから光の投網が発射された。進行方向はまっすぐ。つまり”メタル・ロケット・ウサギ”の進路だ。
ぐんぐんとウサギが迫る中、拘束の投網は空中で広がった。
――いける。
そう思った。このままいけば投網の中央で”メタル・ロケット・ウサギ”を捕らえられる。
だが、異なる展開になった。
なぜならば”メタル・ロケット・ウサギ”がいきなり進路を変えたのだ。それも物理法則を無視するかのように瞬時に進行方向を垂直へと変化させたのだ。
高い天井に向かって飛ぶウサギ。そして空振りに終わり消滅する投網。
――ズガガーンッ!
激しい音がした。
それは”メタル・ロケット・ウサギ”が天井に突き刺さる音だった。頭部を天井の岩盤にめり込ませてウサギの飛翔は止まったのだ。
だがダメージは受けていないようで全身を使い突き刺さった身体を抜いたウサギはそのまま自然落下で地面に落ちた。
ゴトンッ。
硬い音がした。それは金属と石畳の床がぶつかる音だった。
床に落ちた”メタル・ロケット・ウサギ”は首を少し振ると伸びをして再び俺たちに向き直る。
「自爆したのにダメージないんだな」
「あの硬さですからねっ。あれぐらい大丈夫なのかもしれませんっ」
「……まさか空中で垂直に進路変更できるなんてね。意外だわ……」
声に振り向くとロキが復活して戻って来ていた。どうやらダメージから回復したようだ。
「もう、大丈夫なんだな?」
「ええ。死ぬかと思ったけど回復したわ」
これで戦力が整った。それは嬉しいのだが、戦い方は振り出しに戻った状態だ。高速移動できる”メタル・ロケット・ウサギ”にはメグミとロキの通常攻撃は当たらない。そして頼みの綱である拘束の投網は避けられてしまうからだ。
ここで俺たちは隊列を守ったまま会議を始めた。見れば”メタル・ロケット・ウサギ”も俺たちを警戒したようで遠い間合いを保ったまま動かずにいたからだ。
「まず、整理しよう。メグミとロキの直接攻撃は絶対に避けられるから駄目だな」
「そうですねっ。そしてダイキチの投網も空中で避けられてしまいましたっ」
「足場のない空中でどうやって方向変換したのか気になるけど、それよりも対策よね」
そして更に話し合いを続けた結果、俺たちは再度の実験をしてみることにしたのだ。
それは”メタル・ロケット・ウサギ”が空中でどの方向へ進路変更できる方角の確認だった。さっきは上方向へと飛んだ。それが左右や下方向へもできるのかの実験なのであった。
「まずは私が稲妻で攻撃しますっ。ロキは時間差で炎弾をお願いなのですっ」
「了解したわ。稲妻の直撃寸前にロケットダッシュするはずだから、私はウサギが空中にいるときに攻撃すればいいのね」
なるほどな。
ラスボスの”メタル・ロケット・ウサギ”はメグミの稲妻攻撃を必ず回避する。それも空中に飛んで逃げてだろう。
それに向かってロキが攻撃するという手筈なのを理解した。そして必ず避けるだろう。
俺がすべきなのは詳細にそれを観察することなんだろうな。
かなりの難敵なのです。(`・ω・´)∩
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