05話 少子化です。
【毎日昼の12時と夕方の18時に更新します】
この物語は毎話毎話が短いです。
それは4コマ漫画のようなテンポの良さ、余韻を全面に打ち出しているからです。
……決して、私の手抜きではありません。……きっと。
「……こ、子宝の神様?」
「はいっ」
恵ちゃんは元気よく返事してくれた。
だが、いったい、なぜ……?
「お、俺は、
子宝の神様を拝んじゃったの?」
「あ、でも平気ですよ。
男の人が拝んでくれたからって言っても、
男の人が赤ちゃんを産めるはずもないですから」
「そりゃそうだろう」
俺は即答した。
そんな話は聞いたことはないし、もし俺が妊娠するなんてことは想像もしたくない。
「でも昔は男の人が拝みに来てくれたことも多かったんですよ。
とにかく昔は子供がいるのが当たり前で、子だくさんが当たり前でしたから」
昔っていったいいつの話だろう?
戦争のときくらいか? それとも戦後すぐか?
「……で、その子宝の神様の恵ちゃんは、
いったい俺になんの用があるのかな?」
「あんまりな言い方ですね。
拝んだのは大吉さんの方ですよ。私からお願いした訳じゃないんですから」
「た、確かにそうだけど、
子宝の神様だと知ってたら拝まなかったから」
「ひどいですね。
そういう風に神様差別するのは良くないと思います」
なんだか恵ちゃんは憤慨していている。
俺がなにか気に入らないことでも言ったんだろうか?
「……最近ホントに減ったんですよ。
私の御利益なんて、ちっともありがたくなくなっちゃったみたいです」
「そんなことないだろう?
子供が欲しい人は今でもたくさんいるんじゃないか?」
俺は適当なことを言ってみた。
俺にはまだピンと来ないが、結婚して家庭を持ったら、
子供が欲しくなるのはふつうな気がしたからだ。
「甘いっ!
大吉さんはわかってませんっ。少子高齢化社会って知ってるんですか?」
いきなり恵ちゃんは立ち上がった。
そして俺の身体を突き刺さんばかりに人差し指を向けた。
「若い人が結婚しないんです。
そして結婚する人も晩婚が多いんですよ。
だから子供が生まれないんです。つまり子供がいらない世の中なんですっ」
「そ、そうなのか?」
「そうですっ!
ワーキングプアって知ってます?
若い人が定職に就きたくてもつけなくて、
給料の安いブラックな仕事で働くしか仕方ないんです。だから結婚ができないんですっ!」
「は、はあ……」
俺はまるで社会の授業を受けているみたいだった。
恵ちゃんはよっぽど鬱憤が溜まっているようで、
更に若年層の非正規雇用の問題や、労働人口の減少に伴う税収の悪化が、
少子化の負のスパイラルを形成していることまで延々と熱く語り続けたのであった。
「……要するに、
お前の出番がなくなった世の中が不満なんだろ?」
俺は話の要点をまとめて言ってみた。
「お前?
……今、神様に向かってお前って言いましたねっ?」
「……突っ込むところはそこじゃないだろ?」
俺はそう言いながらも話をまとめようとした。
このままじゃ夜中になってしまうし、
いつ隣の部屋から苦情が来るかわかったもんじゃないからだ。
「で、お前はいつ帰るんだ?」
俺は肝心なことを口にした。
時計を見るとそろそろ遅い時間だ。
俺は夕食がまだだったし、明日は入学式なので早く帰ってもらいたかったのだ。
すると恵ちゃんは目をキョトンとさせた。
「私ですか?
私は帰りませんよ」
「はいっ?」
なんかすごい発言を、
サラッと言われた気がしたのだった。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。