497話 使えるスキルが手に入ったのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
そしてメグミとロキの攻撃魔法が着弾した。ガガガガーンッと耳をふさぎたくなるような音が響く。
と、それと同時にウサギの胴体部分になっている宝箱の蓋が瞬時に開き、2人の攻撃魔法を吸収するのが見えた。
まるで水洗トイレの排水のようにぐるぐると渦を巻いて吸い込まれているのがわかる。
でだ、俺はなにをするつもりかというとだが、もちろん斧でウサギを叩き割るのだ。
蓋が開いているのでその上に乗っかている首は今、仰向けで天井を向いているはずだ。それに力いっぱい”賢者の斧”を斬りつけるつもりなのだ。
どこが弱点なのかわからないが、まあ、たいがいの生き物は頭が弱点だ。……魔物にそれが当てはまるかは確信はないけどな。
だが、間合いに入って斧を振り上げたとき、俺の視界は気になるものを捉えた。それは開いた宝箱に収められている巻物であった。蓋が開いた宝箱の奥底に置かれてあるのが見えたのだ。
俺は斧でウサギの頭をかち割るのを中止し、手を伸ばし宝箱の底にあった巻物を掴む。その行動に深い意味はない。お宝を見つけたから条件反射的に手が伸びただけだ。つまり無意識の行動……。
そして俺は巻物を握ったままその場を離れることにした。
なぜならば巻物が俺に取られた瞬間から”動く宝石箱ウサギ”の挙動がおかしくなったからだ。
ウサギは全身をガクガクと痙攣させ両膝を地面についてしまったのだ。そして蓋を閉じて頭を元に戻すと辺りを見回し始める。
「俺が巻物を取ったからか……?」
「みたいですねっ。なんか弱点だったみたいですっ」
「今なら仕留められそうね。メグミ、行くわよ」
そしてロキの提案通りにメグミとロキがそれぞれ雷光の魔法と炎弾の魔法を放つ。すると今度は蓋が開くこともなく見事に命中して”動く宝石箱ウサギ”は光の粒になり消滅したのであった。
「苦戦したが、終わってみれば完勝だな」
「そうですねっ。ダイキチのとっさの機転が良かったからですっ」
「まさか宝箱の中身が弱点とはね~。想像外だわ」
そして俺たち地面に散らばった大量の銀貨を拾う。それが終わるといよいよ俺が入手した巻物の確認だ。
「さあ開けるぞ」
「ワクワクですねっ。どんなスキルなんでしょうかっ」
「役に立つものだといいわよね。……いいえ、これだけ苦労したんだからきっとそうよ」
俺たちは高まる期待感の中、巻物を巻いている紐をするするとほどくのであった。そして明らかになる巻物の正体……。
「……こ、これはすごいものだぞ」
「”拘束の投網”……? なんですかっ? それ?」
「相手の動きを封じるものみたいね。私の麻痺魔法の上位互換ってとこかしら」
そうだった。
このスキルは勇者限定だった。つまり俺だけが使えるスキルだったのだ。そしてその中身は唱えると相手を聖なる光の投網で包んでしまい動きを封じることができるものだったのだ。
「これなら”ロケット・ラビット”相手でも簡単に捕まえられるな」
「そうですねっ。遠距離攻撃手段がないダイキチには使えるスキルなのですっ」
「そうね。私の麻痺魔法が効かない相手でも、このスキルなら通用しそうね」
ラスボス前にロキが見つけてくれた隠し通路の中で思わぬお宝を手に入れることができたのであった。
拘束の投網をゲットなのです。
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