496話 ”動く宝箱ウサギ”の攻略開始なのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
「……やっぱり攻撃魔法を食っちまうんだな」
「そうね。宝箱の中で吸収できるようね」
そうなのだ。
メグミが放った魔法はかなり強力なのだ。なのに何事もなかったかのように”動く宝箱ウサギ”はパクリと飲み込んでしまったのだ。
やがて開かれていた蓋が閉じ、ウサギの頭部が再び元の位置に戻る。その顔は憎らしいほどにほくそ笑んでいるのがわかる。
「……魔法が駄目なら物理攻撃はどうだ?」
そう言って俺は”賢者の斧”を振りかぶりながら突進した。そして間もなく間合いに入れそうな距離になったときだった。
――ブウゥンッ!
すると突然に”動く宝箱ウサギ”がその太い腕でパンチを繰り出したのだ。そのパンチは大ぶりだが振る音が聞こえるほど鋭いもので、俺は思わず後方へとジャンプして避けるのであった。
「やばい。危なかった」
「危険ですっ。気をつけてくださいっ」
「まともに当たったら大ダメージね」
そうなのだ。
ウサギはかなりのマッチョで手も足も極太なのである。あの肉体からの打撃を受けたら壁までぶち飛ばされてしまいそうなのだ。
攻撃魔法は吸収されてしまう。そして接近すれば強力な打撃攻撃が待っている。これはなかなか手ごわい。
なので、俺たちは3人で集まると作戦会議を始めるのであった。幸いウサギ自体はほとんど動かないし、動いてものろいので急襲される心配はない。
「打つ手なしだな。どうやって攻略するかだ……」
「じゃあ、ロキの麻痺魔法をなんども使って徐々に麻痺を完了させるとかは無理なんですかっ?」
「無理ね。麻痺魔法は重ねがけで効果を強めることはできないの。一度使って効果がなければ何度使っても効果が増すことはないわ」
う~む。万事休すか。
……幸い、あのウサギは動きが遅いので諦めて逃げる方法はあるのだが……。
「倒すのを諦めて逃げる手もあるぞ?」
「それは嫌ですっ」
「それは駄目よ」
俺が消極案を提案すると即時に却下された。どうやら女神2人はどうしてもあのウサギを倒したいようだ。
まあ、俺もできれば倒したいから、これ以上強く推すこともないけどな。
そんなときだった。
俺の頭の中で映像が蘇る。それは先程の魔法攻撃と俺が接近しての物理攻撃の映像だった。
「なあ、魔法攻撃を防ぐ理由はわかる。直撃したら倒されるから宝箱の蓋を開けて箱の中に吸収したのが理由だろ? ってことは俺の物理攻撃もダメージが入るから近づかせないようにパンチを使ったってことになるよな?」
「確かにそうですねっ。魔法は当たったら困るっ。だから飲み込んだっ。そして斧の攻撃も困るっ。だから近づかせないようにパンチを放ってきたってことになりますねっ」
「つまり、魔法攻撃も物理攻撃も有効ってことによね? じゃあ、倒せない相手じゃないわね」
そこで俺が提案した。それはウサギの行動に基づいた攻撃方法だった。
小声で俺がその作戦を述べるとメグミとロキは大きく頷くのであった。
「どうだ?」
「いいですねっ。やる価値はありそうですっ」
「上手く行けば倒せそうね」
そして3人で大きく頷き合うと俺たちはすぐさまその作戦を実行する。そのためには陣形を作る必要があった。
俺が先頭に出て、その両後ろ左右にメグミとロキが位置する。つまり俺を頂点に三角形を作った形だ。
「じゃあ、行ってくれ」
「行きますっ。――ほにゃらっ!」
「行くわよ。――ほいっ!」
俺の両後ろから稲妻と炎弾を俺を追い越して”動く宝箱ウサギ”に向かって行く。そして俺は斧を振りかぶりながら全力でウサギに走り出すのであった。
攻略方法が見つかりそうなのです。(`・ω・´)∩
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