495話 ”動く宝箱ウサギ”の脅威なのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
そして俺たちは”動く宝箱ウサギ”と対峙した。身体の大きさは人の背丈ほどもある二足歩行だ。
だが、動きは鈍いようでウサギとは思えない亀の歩みで進んでくる。
「……動きは遅いけど、力はありそうだな」
「そうですねっ。腕も足も太いですっ」
「じゃあ、安全のために動きを止めようかしら。――ほいっ!」
ロキが魔法を唱えた。相変わらず脱力系の呪文だが、それは仕方ない。そしてどうやら唱えたのは麻痺魔法のようで錫杖の先端から炎の弾は出なかった。
だとすると、効いていれば動きを止めるはずだ。
「……ありゃりゃ……。あんま効いてないみたいね」
「……ですねっ。ちょっと動きが遅くなった感じがしますけどっ」
「まあ、効いていると言っても誤差の範囲だな」
そうなのだ。
麻痺魔法が無効ではないようだが、元々遅い動きがちょっとだけさらに遅くなった感じにしか過ぎないのだ。
「……じゃあ、仕方ないですねっ。いつもの方法で倒します。――ほにゃらっ!」
「そうね。私もやるわ。――ほいっ!」
そう。いつもの2人の攻撃魔法だった。
メグミは長杖の先から雷光を膨れ上げさせて、そしてロキは錫杖の先に背丈ほどの炎弾を膨らませる。
そして2種類の魔法が発射されたのであった。
稲妻と炎の弾が瞬きの間もなく宝箱ウサギに着弾。すると凄まじい光が弾け音が響き渡る。
――ガガガガーンッ!
閃光と爆風で辺り一帯の視界が効かなくなる。
「やったか?」
「直撃ですっ」
「手応えはあったわ」
俺たちは、そんな安堵した雰囲気で視界が収まるのを待つ。
だが、……次の瞬間に俺たちは驚愕する。徐々に晴れる視界の中で大きなウサギのシルエットが確認できたからだ。
「……効かないのか?」
「ど、どうしてでしょうかっ?」
「嘘でしょ……?」
そして完全に晴れる視界。
すると直撃したにも関わらず無傷に見える”動く宝箱ウサギ”の姿が確認できたのだ。
だが、様子が変だった。それはすぐにわかる。胴体を構成している大きな宝箱の蓋が開いていたのだ。そのためウサギの頭部は向こう側で見えない。
「……いったい、なにがどうなったんだ……?」
俺は理解が追いつけなくて戸惑ってしまう。するとメグミがいきなり大きな声を出すのであった。
「ああっ! わかりましたっ。私たちの攻撃をあの宝箱で食べてしまったのですっ」
「そうなのね。……確かに攻撃前には蓋は開いてなかったわ」
なるほど。
どうやらあの宝箱には秘密があって、攻撃魔法をその内部に吸収できてしまうようなのだ。そしてそれが正しい証明になるのか、蓋が動いて再び閉じてしまう。すると頭もこっちを向いて不敵に笑むウサギの顔が見えるのであった。
「本当にそんなことがあり得るのか?」
「わかりませんっ。……なので今度は私だけで攻撃してみます。2人はその目で確認してくださいっ」
そう宣言したメグミが再び長杖の先に雷光を膨らませて稲妻の攻撃を行なう。ガガガーンッと激しい光と音がウサギに命中する寸前、それまでの動きから考えられない程の素早さで宝箱の蓋が開き、雷撃を飲み込んでしまうのが見えたのであった。
魔法を食ってしまうのです。(`・ω・´)∩
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