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49話 祠の神は不在なのです。

【毎日昼の12時に更新します】



この作品には以降のストックがありません。

そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。

すみませんが、よろしくお願いいたします。



この物語は毎話毎話が短いです。

それは4コマ漫画のようなテンポの良さ、余韻を全面に打ち出しているからです。

……決して、私の手抜きではありません。

……きっと。



 


 いや、駆け足で向かったのは恵ちゃんだけじゃなかった。

 なんと呂姫ちゃんまでもが急ぎ足で向かっているのだ。




 俺は二人の神が慌てて向かう先になにがあるのか猛烈に気になり始めた。

 結果、俺もダッシュしていたし、他の澤井さんや河合さん、新井までもが走り出していたのであった。




(ほこら)ですっ!」




 恵ちゃんがそう言った通り、向かった大木の根本には石造りの小さな古い祠があった。

 樹木の根っこに土の下から押されたようで斜めに傾いた苔むした古いものだった。

 この朽ち果てた感は、デパートの建物外の片隅にあった恵ちゃんの祠を彷彿させるものだった。




「いないね?」




 屈んで祠に手を載せた呂姫ちゃんがそう言った。




「いないですねっ。……でも気配は感じるので留守にしている可能性がありますっ」




 恵ちゃんがそう言うと呂姫ちゃんも頷いた。




 二人は小声で会話していた。

 すぐ側にいる俺には聞こえていたが、他の人には聞こえていない様子だった。

 どうやら彼女たちが神様であることは、恵ちゃんはもちろんだが呂姫ちゃんもみんなには内緒にしておきたいようだ。




「これ、神様の家だよね?」




 河合さんがそう尋ねた。




「そうね。でも説明書きもなにもないから、どんな神様が祀られていたのかはわからないわね」




 澤井さんが最もなことを言う。




「お稲荷さんじゃないのかな? だいたい小さい祠はお稲荷さんが多いよね?」




 新井の意見に河合さんと澤井さんは納得した様子だった。

 だが俺は恵ちゃんと呂姫ちゃんが頷いていないので、違うんだろうなと考えていた。




 やがて興味を失った河合さんたちは場所を離れて他に行き始めたので、俺と二人の美少女神も後を追った。




「なんの神様かわからないのか?」




 俺は恵ちゃんに尋ねた。




「わからないですねっ。神様であることは間違いなんですが……。

 澤井さんが言う通りに石碑でも建っていれば簡単なんですけどっ……」




 恵ちゃんはお手上げの様子だった。

 そして呂姫ちゃんも頷いているので同意見のようだ。




 そして俺たちは公民館の周りを一周し、外のトイレとか水道、非常用の薪などの位置を確認して、館内へと戻ったのであった。




 やがて夕方近くなった。

 俺たちを含めた今夜の夕食当番は厨房に集合したのであった。




「今夜は定番のカレーですねっ」




 恵ちゃんはエプロン姿だった。

 小柄な恵ちゃんがエプロンを身に着けているのは、ちょっとかわいい。

 それは認める。

 俺だってこの迷惑女神のすべてを否定している訳ではないのだ。




 だが、俺は恵ちゃんが用意した食材を見てしまったので頭に手刀を落としてしまった。




「はう。……なんなんですかっ? 私は悪いことしてませんよっ」




 涙目で抗議する恵ちゃんを見て俺は指摘する。




「その食材はなんだ?」





「シーフードですよっ。カレーに入れたらおいしいじゃないですかっ」





 だが俺は恵ちゃんが用意したそのシーフードなる食材をじっくりと見てもう一度手刀を落としてしまった。

 ビニールパックから出されたその食材には独特の臭いがあって、それが辺りに漂う。

 それに気づいた連中たちが、こちらを伺っているのも見える。




「はう。……だからなんなんですかっ? 私は悪いことしてますかっ?」




 涙目じゃなくて滂沱になってしまった恵ちゃんを見てしまったので、俺は少々反省した。

 強めに打った手刀はちょっとやり過ぎだったかもしれない。

 だが言うべきことは言わなくてはならない。




「確かにシーフードではある。だがその食材は万人受けはしないからダメだ」




「なんでですかっ? 栄養もあっておいしいんですよっ?」




 俺はため息をつく。




「あのなあ、臭いと味が一般人のカレー向きじゃないんだよ」




 俺はそう指摘した。

 そうなのだ恵ちゃんが用意したのは、……まあ魚のアジの干物ではあった。




 アジの干物がカレー向きではないとは言い切れないが、恵ちゃんが用意したのは独特の臭いが強烈な干物である()()()だったのだ。




「それは好事家の間では非常に好まれる食材だ。もしかしたら()()()()()()ってのもあるのかもしれない。

 でも臭いと味が強烈過ぎて一般人には抵抗がある食材だと知れっ!」




「……うう。美味しいのに……」




 恵ちゃんは俺の指摘を受けれいて、くさやをチャック付きのビニール袋に戻したのであった。

 こういうところは素直でかわいい部分でもある。


 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「生忌物倶楽部」連載中


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み

「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み

「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み

「墓場でdabada」完結済み 

「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み

「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み

「空から来たりて杖を振る」完結済み

「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み

「こころのこりエンドレス」完結済み

「沈黙のシスターとその戒律」完結済み


 も、よろしくお願いいたします。

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