48話 到着したのです。
【毎日昼の12時に更新します】
この作品には以降のストックがありません。
そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。
すみませんが、よろしくお願いいたします。
この物語は毎話毎話が短いです。
それは4コマ漫画のようなテンポの良さ、余韻を全面に打ち出しているからです。
……決して、私の手抜きではありません。
……きっと。
やがて俺たち一行は廃村に到着した。
そこはクネクネと曲がった山道を何度も何度も曲がり、長い時間をかけてバスが登りきった山の中腹にあった。
建物はざっと見て十件ほど。
でもそれらはすべて……。
「ぜんぶ廃屋じゃねえか……」
昭和の時代なのか、それとも大正時代に造られたのか、木造平屋の家屋はすべて倒壊寸前のボロボロ状態だった。
これじゃ中で過ごすことはもちろん、下手すれば倒壊するかもしれないような状態だったのだ。
「みんな間違っても家の中へ入ろうなんて思わないでくださいね。
崩れたら大変なことになりますから」
若杉先生が手でメガホンを作って俺たちにそう告げた。
「……ねえ、私たちこれからどうするの? だって何日も過ごすんでしょ?
これじゃ野宿するしかないじゃない?」
澤井遙香さんが心配そうにそう告げた。
それはそうだ。俺もそう思う。
まさかこれからテントを設営してそこでキャンプするとは思えない。
「まだ夜になれば冷える季節だからテントでキャンプは困るよね?」
俺の心配と同じことを河合花菜さんも思ったらしい。
「……こういうところはクマやイノシシも出るかもしれないな」
新井慎一も思うところがあるようだ。
「大丈夫。慎一になにかがあれば私が守る」
頼もしそうにそう言うのは辻神呂姫ちゃんだ。
呂姫ちゃんはバスの中以来、なにかと新井につきっきりだ。
どうやら気に入られたようだ。
「あれか? もしかしたら呂姫ちゃんの登場で新井の人生が上向きに変わるってこともあるのか?」
俺は小声で恵ちゃんに問いかけた。
「どうでしょう? 予想外の出来事でしたが、もしかしたらそうなるかもしれません。
でも、呂姫ちゃんは気まぐれですからね。
新井さんに飽きたらポイ捨てもありますよっ」
なんとも残酷な展開もありそうなことを、恵ちゃんはさらっと言った。
「ではみなさん。宿泊場所に移動しましょう」
俺たちの心配事はわかったかのように、若杉先生が先頭を切って歩き出した。
すると他の先生や他クラスの奴らも歩き出す。
「宿泊場所ってなんでしょうねっ?」
恵ちゃんが興味津々といった感じで俺に問いかけてくる。
「なんだろうな。すでにテントが設営されているとかかな?」
そしてものの五分もしないうちだった。
俺たちの目の前に鉄筋二階建ての建物が見えてきたのだ。
「今は住民が誰も居ないので使われていませんが、元は公民館だった建物です」
若杉先生がそう言った。
なるほど二階建てて部屋数も多そうなので、俺たち神武高校一行が寝泊まりするには十分な規模の建築物だった。
両開きのガラス戸玄関を入るとロビーになっていて、右側に事務室跡があり、左側は全員が集まれるホールになっていた。
更に奥には厨房や大浴場もあり快適に過ごせそうだった。
中央に大きな階段があり、二階の左右は会議室とか遊戯室とか洋間や和室の部屋が並んでいて各クラス全員が宿泊できる部屋が揃っている。
「各自、建物周辺なども含めて、どこになにがあるかを確認して」
若杉先生の指示もあり、俺たちの班はそろって公民館跡を出た。
すると建物脇には野球ができそうなほどのグランドがあり、その奥には滑り台やジャングルジムなどの遊具があった。
「あ、あれはっ」
その遊具の近くに大きな木がありその根本になにかしらがあるのが見えた。
それを見て恵ちゃんがダッシュで向かったのであった。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。