470話 霊木が必要なのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
「……それで臥留子ちゃん。俺の体は元に戻せるんだろうか?」
俺が特殊な例だとはわかった。
だが、それで話は終わりじゃない。俺は加茂大吉に戻りたいのだ。
「……可能。……大丈夫」
ホッとした。
良かった。俺はちゃんと元に戻れるようだ。見ると恵ちゃんも俺同様に安堵した表情になっている。
ダイキチーナは元々実在しない人間なのだ。なのでこの姿で長い時間存在するほど、あちこちの人間関係に綻びができる。
言い訳できない辻褄が生まれてしまうのだ。
「……だが、問題ある」
臥留子ちゃんが相変わらずの無表情のまま、なにやら不穏な言葉を呟いた。
「問題ですかっ! それは大変なことですかっ?」
恵ちゃんが鋭く問う。
俺も思う。問題が軽度なものならいいのだが大変なことだと困るからだ。
「……霊木に実る……実が必要……今回の……ダイキチーナ化は特殊……だから……」
なるほど。女体化の名人である臥留子ちゃんでも今回の俺は元の戻すのは難しいようだ。なのでアイテムを使うって訳だな。
だが、霊木と聞いて恵ちゃんが激しく反応するのであった。
「霊木! ……霊木を探さなきゃならないんですかっ?」
恵ちゃんが叫ぶようにいう。
その顔にはうんざりとした表情が浮かんでいる。探し出すのが大変なんだろうか?
「そう。……探す必要が……ある」
すると恵ちゃんは天を仰いで両手で顔を覆ってしまった。なにか大層な理由でもあるのだろうか?
「……霊木を探すって、砂漠に落ちた針を探すようなものですよっ。どこか宛てがあるんでしょうかっ?」
なるほど。
霊木とは特殊な樹木のようで、そんじょそこらに生えているものではないようだ。かと言って外国とかにあるんだったら手の打ちようがないな……。
「ある。……持って来た……」
口数が少ない臥留子ちゃんがゆっくりと説明してくれた。
簡単にまとめると、この林に住んだときに霊木がないのがわかったので、以前住んでいた場所から木を持って来たとのことだ。
そしてこの林に植えたらしい。
どうやら臥留子ちゃんにとって霊木とは必要不可欠なもののようだ。
「そうなんですかっ。じゃあ、すぐに手に入りますねっ。良かったですっ」
恵ちゃんの顔が安堵の表情になった。そしてそれは俺も同じだ。この場所に植えてあるのならすぐに木の実は入手できるだろう。
だが、臥留子ちゃんは首を左右に振るのであった。
「……どこに……植えたのか……忘れた……」
なんてことだ。
俺はこの林を見回した。けっこう面積がある林である。端から端まで歩けば10分以上はかかる広さなのだ。
その中でたった1本の木を見つけないといけないようだ。
「だいたいどの辺かとかもわかりませんかっ?」
東西南北の四方に広がっている林なのだ。だいたいの位置でもわかれば確かに探しやすい。だが、臥留子ちゃんは首を傾げてしまった。なにかを思い出そうとしているようだ。
「……確か……大きな木の側だった……と思う……」
「この林は大きな木ばっかりですよっ」
恵ちゃんががっかりと首を落とす。
こりゃだめだ。この林は雑木林でカエデとかクヌギなどが混じって生えている。そしてそれのどれらも見上げるばかりの大きな木ばかりなのだ。
なので手がかりは失せたと思って間違いないだろう。
「……でも……霊木は……目立つ……」
「はっ……。確かにそうでしたっ。霊木は独特ですからねっ。なんか見つかりそうな気がしてきましたっ」
臥留子ちゃんと恵ちゃんの説明によると、霊木は木自体は平凡だが、その実が青白く光っているとのことだ。
なので、木の実を探せば見つかりそうだ。
「じゃあ、手分けして探しましょうっ」
「……私は……あっちを……」
「じゃあ、俺はこっちだな」
そして俺たちは分散してそれぞれの方角へと向かうのであった。
木の実を目当てに探すのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。