468話 犯人の可能性が濃厚なのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
「秀子ちゃんに直接尋ねてみますっ。返信してみますねっ」
片手でつり革を掴んだまま、もう片方の手でスマホを操作した恵ちゃんが返信の文章を書いて送信したのであった。
するとすぐに返事が返ってきた。
「あ、もう返事が来ましたっ。……え? 『まだ秘密』だそうですっ」
「意味わからない……わ。……でもどんな方法を使ったのかはわからないけど秀子ちゃんが私たちがプレイをしているのを確信しているのだけは間違いないわね」
まったくの謎だ。
そう言えば思い出す。俺はゲーミングPCを手に入れたとき、紛れ込んでいたあの謎卵について女神たちに問い合わせたことがあった。
だが、あのときは確か秀子ちゃんからの連絡はなかった。そして俺はスピリット・クエストをプレイすることは伝えなかったはずだ。
「……ってことはですねっ。……卵の犯人は秀子ちゃんじゃないんでしょうかっ?」
恵ちゃんは説明をする。
秀子ちゃんはPCショップで俺とゲーム対決をしていたことから、俺がゲーミングPCを買いたがっていたことを知っていたことだ。
そして神力を使って卵を混入させる能力があることもだ。
「呂姫ちゃんが言ってましたよねっ。連絡がつかない秀子ちゃんと臥留子ちゃんのどちらかが犯人じゃないかってっ」
そう言えばそうだった。
集子ちゃんと眠京太郎は知らないと言っていて、連絡がとれない、つまり確認ができないのは秀子ちゃんと集子ちゃんの2人だけだったのだ。
かろうじて集子ちゃんの可能性も残っているが、秀子ちゃんはわざわざ”スピクエを楽しんでるか”と訊いてきたくらいなのだ。
どうやら犯人は秀子ちゃん一択だろうな。
■
俺と恵ちゃんは地元の駅に到着した。
ここからは徒歩で帰れるのだが、その前にやらなくてはならないことがある。
それはもちろん俺の姿をダイキチーナから元に戻すことだった。
そして早速、臥留子ちゃんに電話する。すると今回はすんなりと繋がった。
「……わかった。……元に戻してあげる。……すぐに私の家に来て……」
恵ちゃんのスマホのスピーカーから臥留子ちゃんのそんな声が聞こえてきた。
なので俺と恵ちゃんは臥留子ちゃんの自宅へ向かうことにする。臥留子ちゃんの自宅とはあの坂道沿いにある林の中の小さな石の祠のことだ。
「歩くと結構距離がある……わよ。バスに乗らない?」
「そうですねっ。お日様があって暑いですし、そうしましょうっ」
そして俺たちはバス停の案内板を見て、祠に最寄りになるバス停に向かえるバス乗り場へと向かうのであった。
バス停はそれなりに人々が並んでいたが、ここが駅で始発であることから到着したバスには座ることができた。
「ああ。冷房は偉大だ……ね」
「そうですねっ。……その言葉遣いもあと少しの辛抱ですよっ」
俺の言葉が男言葉になりかけて、それをその都度、訂正しているのに恵ちゃんはちゃんと気づいていたようだ。
そしてバスは発車した。
バスに揺られること15分。
目印のコンビニ近くに停まったバスから俺と恵ちゃんは降りた。
そしてコンビニ脇をすり抜けて林を通る坂道を登り始める。やがてすぐに記憶にある祠を見つけたのであった。
俺と恵ちゃんが祠の前に到着した。
すると祠がボフンと白い霧のようなものに包まれた。そして晴れるとそこには疫病神である山井臥留子ちゃんが立っていたのだ。
どうやら俺たちが到着したのがわかったのだろう。
臥留子ちゃんは夏らしい浴衣姿だった。白地に淡い青色で描かれた紫陽花の柄がよく似合っている。
「……待ってた」
「臥留子ちゃん、すまない。……よろしくお願いします」
俺がそうお願いすると臥留子ちゃんは不思議そうな顔をして俺を見るのであった。
どうやら犯人は秀子ちゃんなのです。(`・ω・´)∩
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