466話 制限時間だったのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
そして俺、つまり半裸状態のダイキチーナに向けて投げられたケーキだ。その数は2個。緩やかな曲線を描いて俺に天井から落ちてくる。
だが、2個とも同じ曲線を描いていない。つまり着弾地点が異なるのだ。
俺は着弾地点を予想して身を捻る。最初に到達するひとつは下半身を狙っていた。それを躱す。
そして次弾は……、なんと変化した。空中で変化球のように急に角度を増したのだ。そしてそれは俺の胸へと迫るのであった。
(……クッ。避けられねえ……)
角度がエグい。どうあっても俺の胸に直撃コースであった。
そしてブラに命中してしまったのだ。
途端に弾けるブラ……。飛び出す勢いでたゆんと揺れる胸……。
「オオォォォォォォォォォォォ~……!!」
「すげえボリュームっ!!」
「美しい。……ひたすら美しい」
「美乳だ。美乳過ぎるっ!!」
「俺、もう死んでもいい……」
そうなのだ。
俺のブラは消失し、そのダイキチーナの巨乳が顕にされてしまったのだ。
すぐさま俺は手で隠したのだが、しっかり見られてしまったようだ。
そのときだった。
チャイムが鳴り響き、VRゴーグルをかけた俺の視界に変化が現れたのだ。仮想現実であったお菓子の家がなくなり、元のスクリーンに囲まれた無機質な空間に戻っていたのだ。
で、俺は自分の身体を見下ろす。そしてホッとしたのであった。そこには裸ではなく、青系のTシャツを着てショートパンツ姿の自分がいたからだ。
「むう。制限時間になった」
不満そうに秀子ちゃんが言う。もちろん秀子ちゃんの格好も元の姿だった。
そう言えば制限時間ってのがあった。確か10分のはずだ。どうやら秀子ちゃんは律儀にゲーセンが指定した開始10分後に神力が解けるように指定していたようだ。
そして俺は大勢いるギャラリーの男たちを見る。だがその顔にいやらしさは感じられない。どうやら俺と秀子ちゃんの醜態を見た記憶もきちんと改竄されているようだった。
「私の勝ち」
「……まあ、そうだね」
突然のゲーム改竄と参加の強制。
それらを含めて秀子ちゃんだ。なので別に秀子ちゃんの勝ちでも構わない。見られた裸の記憶は消されたので、俺にとって失うものはなかったしな……。
■
その後、俺と恵ちゃん、彩花ちゃんと沙也加ちゃんに秀子ちゃんを加えた5人は軽く食事を摂ることになった。
このショッピングモールの中にあるフードコートでバーガーとポテトと飲み物を買い、テーブル席に収まったのだ。
「遊戯秀子さんですよね?」
「知ってますよ。格ゲー大会で優勝してますよね?」
驚いたことに彩花ちゃんと沙也加ちゃんは秀子ちゃんを知っていた。もちろん女神であることではなくて、人間としての活躍を知っていたのだ。
どうやら秀子ちゃんは各地で催された格闘ゲームの大会で活躍していたようだった。
俺もゲーム好きだが、ソロプレイ……引きこもりで自宅でプレイばかりなので、大会とかにはまったく興味がなかったので知らなかったが、ゲーム好きの間には有名な話らしい。
ゲーム大会は男女の体格差が勝ち負けに関係ないこともあって、それなりに女性プレーヤーも参加しているようなのだ。
だが、やはり趣味の好みの問題で圧倒的に男性プレーヤーが占めている。そんな中、小柄で美少女の秀子ちゃんはゲームの強さだけでなく、ビジュアル的にも注目を集めているらしいと考えられる。
「そんな大会があったことも、そこで秀子ちゃんが活躍していることも、ちっとも知りませんでしたっ。秀子ちゃん、すごいんですねっ」
恵ちゃんが手放しで称賛する。それは俺も同じ気持ちだ。
やはりゲームの神だけあって、負け知らずの対戦成績らしい。
(……ん? 待てよ。……だとしたらおかしいぞ)
俺は念話で恵ちゃんに質問した。念話を使ったのはもちろん従姉妹たちがいるからだ。
(……なにがおかしいんですかっ?)
(大会で常勝無敗。そしてこの見た目。プロチームからの誘いがないこともそうだが、マスコミが放って置かないんじゃないか?)
そうなのだ。
無敵で美少女。この要素があるのならeスポーツのプロチームから参加の誘いがあるのは当然だし、ゲーム業界だけでなく一般のメディアが取り上げないのは不自然なのだ。
(……確かにそうですねっ。……なら、秀子ちゃんに訊いてみましょうっ)
そして恵ちゃんは秀子ちゃんに念話を送るのであった。
負けは負けなのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。