456話 なにやら凄そうなゲームなのです。
間に合いました。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
やはりオープン初日だからなのか、それとも目新しい新機種が多いからなのか、店内は相当混んでいた。
仕方なく俺たちは人々の縫うように躱しながら進む。
「しかし、すっごく混み合ってますねっ」
「そうだな。……そうね。本当だわ」
危ない。危ない。
俺は周囲に気を取られてしまい、ついつい自分が今、女であることを忘れてしまって男言葉を使ってしまった。
だが、幸い、彩花ちゃんにも沙也加ちゃんにも聞こえなかったようで問題はなかった。
「ダイキチーナちゃんっ。気を付けてくださいねっ」
「……そうね。油断していたわ」
小声で恵ちゃんが注意してきたので、俺も小声で謝るのであった。
それからも店内を巡回するかのように俺たちはあちこち見て回る。空いているゲームがあれば、プレイしてみようと思っているのだが、ほぼすべてに誰かしらが遊んでいる状態なので俺たちは仕方なく空きを求めて彷徨っていた。
そんなときだった。
店の奥にある広い空間に大勢の人々たちが集まっているのだ。人垣というか黒山の人だかりというかその奥が開けた空間になっているのはわかるのだが、人々の頭や背中で中が一切見えないのだ。
そしてそこからは軽快な音楽と人とは思えない獣のような叫び声とビームが発射される音が大音響で流れているのであった。
「奥になにかあるわね。……ちょっと気になるわ」
「そうですねっ。店のいちばん奥ですし、この店の目玉商品かもしれませんよっ」
俺たちは中でなにがあるのかがわかるために近寄った。だが大勢の人壁に阻まれて見ることができない。
そんなときだった。恵ちゃんが天井近くを指さしたのだ。
「ああっ、見てくださいっ。ゲームがわかりますよっ」
「……本当ね。……FPS系のゲームなのね」
そうだった。
天井近くには大きなモニタが設置してあり、この人混みの奥で行われているであろうゲームの様子がリアルタイムで放映されているのであった。
ゲームはプレイヤー視線で銃を撃ちモンスターを攻撃している。割とオーソドックスなスタイルのゲームだ。
舞台は宇宙船の内部のようで、侵入してきた宇宙生物相手に小銃型の光線銃で戦ってるのがわかる。
「……でも、これって別に目新しくないわよね」
「そうね。こんなゲームでこれだけのスペースを使ってるのも変ね」
彩花ちゃんと沙也加ちゃんがそう言うのもわかる。
確かにモニタで見る限り、これは別に斬新な仕組みのゲームではない。それに一戸建て一軒分もあるようなスペースで行うゲームじゃない。よくあるゾンビを銃で倒すゲームなら、ちょっと大きめの筐体で間に合うのだ。
でも、これだけの人たちが集まっている。もしかするとなにか新しく素晴らしいゲームの可能性はあるな。
「と、とにかく近くで見ましょうっ」
「そうだね。……でも、どこなら見られるのかな」
「ああっ。……端っこが比較的空いてますよっ。あっちから行きましょうっ」
目ざとく恵ちゃんが人口密度が低い場所を見つけた。確かに人垣の端っこは人に数が少なくてなんとかなりそうだ。
すると眼の前にいた5人組の観客が場所を離れた。ラッキーだ。これならそこで見ることができる。
なので、俺たち4人は空いたスペースへと身体をねじ込むのであった。
「あれっ? ……なにもないところであの人、銃を持っていますよっ」
「ヘッドギア。……そうなのね。これはVRゲームだったのね」
俺は女言葉に注意しながら発言する。
そうなのだ。
今、俺たちの前で2人の客がFPSゲームをプレイしている。だがそこは証明写真を撮るような写真スタジオのような無地のスクリーンが壁にあるだけなのだ。
そこで客たちは銃を構え射撃しているのだが、敵のモンスターはもちろん、発射されたビームも一切見えないのだ。ただ派手なBGMと発射音と破裂音、そして敵の唸り声、叫び声だけは聞こえている。
そしてだ。天井付近や壁に設置された大きな液晶モニタを見ると客たちは光線銃で宇宙生物をしっかり倒している。つまりは客が頭部に被ったVRヘッドギアからは、そういう映像がしっかりと見えているという仕組みだとわかる。
しかもあの様子からすると臨場感たっぷりの立体映像だと容易に想像できるものであった。
新手のVRゲームなのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。