453話 貸しの中身なのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
すると恵ちゃんは頭を抑えながらも考え込んだ。そしてなにかわかったかようで口を開く。そしてその顔には不満が見て取れるのであった。
「……ちょっと待ってくださいっ。あれは貸しだって言いましたよっ」
「なにが貸しなんだ?」
俺は思う。俺が言った思い当たる節ってのは、もちろん彩花ちゃんと沙也加の件だ。恵ちゃんの神力で操られたふたりが俺を誘惑してきたことを言っている。
そしてそのことだということは恵ちゃんもわかっているはずだ。なんせ、神力を使った張本人だからな。
それなのに貸しとは訳がわからないことを言う。
ちなみに貸しとは俺が立て続けに恵ちゃんに質問したときだ。確か通う大学を近くの大学に設定した理由うんぬんだったと思う。
「貸しとは私が近くの大学に通っているのに、一人暮らしが許された理由を話したときのことですっ」
どうやら俺の記憶は間違っていなかったようだ。
だが、その貸しの対価がわからない。
すると俺の疑問がわかったようで、恵ちゃんはニヤリと笑みを浮かべるのであった。
「彩花ちゃんと沙也加ちゃんですよっ。従姉妹のお姉さんと子作りしてもらうのが貸しのつもりだったのですっ。……はう。……痛いですっ」
そりゃそうだろう。
俺は今度は強めに手刀を落としたのだ。なので恵ちゃんは大粒の涙を浮かべて俺を見るのであった。
「な、なにをするんですかっ。毎度毎度なのですが、とっても痛いんですよっ」
「従姉妹との間に子供なんて作れるか! お前はなにを考えているんだ」
すると恵ちゃんは胸を張るように得意げな姿勢になる。
「知らないんですかっ? 従姉妹とは結婚できるんですよっ」
……恥ずかしながら、俺はそれを知らなかった。従姉妹と結婚するなんて考えたこともなかったので、そんなことが可能とは思ってもみなかったのだ。
だが、問題はそこじゃない。俺は強く出ることにした。
「仮にだ。……従姉妹と結婚できるとしても、2人ともとは結婚できないだろう。日本では重婚は禁止なんだぞ」
そう。これなら知っている。
日本では一夫一妻制度だ。これは間違いない。
「ひとりと結婚して、もうひとりは愛人にすればいいだけですっ。……わ、わかりましたっ。この貸しはなかったことにしますっ……」
恵ちゃんは狼狽えて後方へと下がる。両手をクロスさせて頭を防御させながらだ。なぜならば俺が手刀で身構えたからである。
「……はあ。もうこの話は終わりだ。じゃあ、記憶の改竄はくれぐれも頼むぞ」
「……助かりましたっ。お任せください。……では、おやすみなさい」
そう言ってバッグを手に取ると恵ちゃんは自室へと戻って行くのであった。
■
そして目覚めると朝。
不思議なものだ。半年前まではこの部屋で寝起きしていたので、この部屋の天井は見慣れているはずだったのに、今見ると見慣れぬ天井になっていた。
それだけ俺は、あの神武寮の部屋に馴染んでしまったってことだろう。
そしてベッドから起き上がると、寝間着を脱ぎ服を着替える。それはもちろん夜中に恵ちゃんに用意してもらったもので、青系のTシャツと可愛いデザインのショートパンツだ。もちろんブラもちゃんと着用している。
それから俺は自室を出た。
するとなぜか俺は足音を忍ばせて歩いていることに気がつく。無意識だったが、俺の姿はダイキチーナなのだ。この姿が受け入れられているのか確信がないので慎重になってしまっているようだった。
貸しの意味が判明したのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。