445話 全国恋占協会なのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
そして恵ちゃんは部屋の隅に置かれた座卓に俺を案内する。それからお茶と煎餅を出してくれるのであった。
「まだなにか訊きたいことがありそうですねっ。お話訊きますよっ」
そう言って俺の対面に座ったのだ。
そして俺も座布団に腰を下ろす。まあ、訊きたいことがあったのは事実だからな。
「お前は日本の神様だけあって和風が好きなんだよな?」
「はいっ。好みはもちろんなんでも和風ですっ。この部屋を見てもらえばわかると思いますっ」
「じゃあ、なんで臥留子ちゃんの異世界で街を創ったときは西洋風だったんだ?」
そうなのだ。
恵ちゃんが臥留子ちゃんの創造世界に構築したもの。それは欧州中世の城郭都市だったのだ。そして街並みはもちろん住民の衣服もすべてそうだったのだ。
「あれは一度ああいうのも創ってみたいと思っていたからですっ。だけど3日で飽きましたっ。なので和風に創り変えようと試したのですが無理だったのですっ」
聞くと、どうやら恵ちゃんは天守閣を持つ日本の城を中心とした城下町を創ろうと考えたらしい。だが臥留子ちゃんの創造物保護の神力が強くて行えなかったとのことだ。
なるほど。……女神に得手不得手はあるが、臥留子ちゃんの神力は相当なもののようだ。
「最後にもうひとついいか?」
「いいですよっ。なんでも聞いてくださいっ。……あ、これは貸しですよっ」
なんか訳がわからんことを提示されたが、俺は深く考えることなく尋ねるのであった。
「……あとさ、さっき通っている大学が近所の東都総合大学って設定してたろ? あの距離じゃこの家から余裕で通えるぞ? どうやって一人暮らししている設定にしたんだ?」
そうなのだ。
東都総合大学、通称:東総大はここから電車で数駅。女性に限らず男性でさえ自宅からの通学を選択するだろう。
一人暮らしをすることとはアパートを借りることになり、学生の身分ではアルバイトで全額家賃を払うのは難しいはずだ。なので自然に両親からの援助となり、実家の家計に負担がかかるので、普通は許可されないはずだ。
ましてや恵ちゃんは女性である。若い女性の一人暮らしを好まない親御さんは多いはずで、俺の両親も普段の言動からして、簡単には許可しないはずなのだ。
「ああ、それなら親。……つまり大吉さんの両親から許可が出ているのですっ。私は学生の傍ら占い師として生計を立てているので、アパートの家賃は全額私が負担していることになっているのですっ」
「な、なんだって……?」
「私は両親に、私が全国恋占協会加盟の正式な占い師である身分証と給与明細を見せていることになっているのですっ。そのことから一人暮らしの許可が出た設定になっているのですっ」
――全国恋占協会。なんとも怪しげな団体だ。いや、思いっきり胡散臭いぞ。
「実在するのか? その協会は?」
「しますよ。これ会員証ですっ」
そうして恵ちゃんが取り出したのは、なにやら運転免許証みたいなカードだった。そこには顔写真と住所や資格が記載されていたのだ。
「これ、……ホンモノなのか?」
「失礼ですねっ。本物ですっ。……私が以前に作った協会なのですっ」
そう言えば、あれは入学直後のことだった。
俺が体調を崩した澤井遙香さんを保健室に送った後に教室に戻ると恵ちゃんがクラスメート相手に恋占をしていたことを思い出したのだ。
「入学式の日にお前が教室で恋占をしていたのはインチキじゃなかったってことか……」
「そうですよっ。私は子宝の神なので、割と真面目に男女をくっつけようとしていたんですっ」
少し憤慨気味に恵ちゃんは主張するのであった。
聞けば入学式の直前に思いついて協会を設立したとのことで、現在は全国に数百人の会員がいる組織だとのことだ。
「……まあ、でも準備期間が短かったので、主だった会員は神ばかりなんですけどねっ」
「神も入会しているのか……?」
「ええ。片思いの神、失恋の神とか不倫の神なんかですねっ……」
俺は呻いた。
さすがは八百万の神々だ。そんな神様もいるとは知らなかった。
だが、片思いの神や失恋の神、不倫の神じゃ恋愛は成就しないんじゃないかとも思ったが、余計なことは口出しするのを止めようと思い直した。
……具現化して、姿を現されたら困るからな。
……そこで俺は、ふと、あることに気がついた。
「なあ、お前が恋占の会長ならば、お前は金持ちなんじゃないのか……?」
そうなのだ。
全国組織の協会の会長職に就いているのであれば、それなりの収入があるんじゃないかと思ったからだ。
だけど、この子宝の神はいつも金欠病なのだ。正直、貧乏神の間違いじゃないかと思ったことも、一度や二度じゃない。
「……それなのですがっ。……会長職は名誉職なので無給なのですっ。なので私には決まった給料はないんですっ」
なんてことだ。
ひょっとしたらと思った俺の考えは徹底的に間違っていたようだ。
説明を聞くに、急いで作った協会なので給与面の話し合いをするのを忘れてしまって、その結果、会長は名誉職とされてしまったようだった。
なんとも間抜けな話である……。
「なので両親に見せた給与明細は神力で作った偽造なんですけどねっ」
「まあ、そうなるだろうな……」
実際はアパートに一人暮らししてる訳じゃなく、俺と神武寮で暮らしているんだしな。
とりあえず誤魔化せればいいのであるから……。
妙な協会を作っていたのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「師匠を追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




