441話 同じ大学なのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
そして俺と恵ちゃんは玄関で靴を脱ぐと廊下を歩く。そしてリビングへと向かう。
まあ、リビングって言ってもここは和風な家屋なので、よくあるダイニングキッチンとは違って単に台所に近くてテレビがある広い部屋だというだけなのだがな。
「ここだ」
居間は廊下の奥にある。廊下の左側は風呂で、右側の襖を開ければそこが、居間。お袋が言うリビングだ。
「ただいま~」
俺は軽い調子で襖を開けた。彩花ちゃん、沙也加ちゃんの2人の従姉妹に会うのが久しぶりなので実はちょっと緊張していたのだ。
で、それをごまかすための演技だったのだ。
「あ、大吉くん? 大っきくなったわね」
「へえ、そうだよね。だって高校生になったんだもんね」
今までしていた会話を止めて座卓に向かい合って座っていた従姉妹たちは俺を見上げて、そう感想を述べるのであった。
「彩花ちゃん、沙也加ちゃん、久しぶり。2人とも綺麗になったね」
これはお世辞ではない。
前回会ったときは高校一年生だった2人は、今は大学生。少女の面影を残しながらしっかり大人の女性へと変貌していたのだ。
そしてナチュラルメイクされた顔は美しく。見る者を引き付ける魅力があった。
「やだ。大吉くん、お世辞?」
「お世辞でも嬉しいわ」
そう答える彩花ちゃん、沙也加ちゃん。
実は俺はここで困っていた。2人の区別がつかないのだ。どちらも黒毛のショートボブで着ている服もサマーニットで下はデニムのショートパンツで色までいっしょなのだ。正直、俺にはどちらが彩花ちゃんでどちらが沙也加ちゃんなのか判別方法がわからない。
だから向こうから名乗ってくれるのを待っているのだが、話題がそっちに向かわない。俺の高校生活とか後からでもいいような内容ばかり尋ねてくるのだ。
そんなときだった。
俺の背後に自然に隠れるようになっていた恵ちゃんが俺の横へとぴょんと飛び出したのだ。
「久しぶりですねっ。彩花ちゃん、沙也加ちゃん」
恵ちゃんが明るい笑顔で話しかける。その雰囲気はすでに旧知の仲って感じである。さすが神力と言うべきか。
「え~、恵ちゃんなの?」
「わ~、久しぶりだよね」
同い年の女子同士だからだろう。彩花ちゃんと沙也加ちゃんは座布団から立ち上がって恵ちゃんと3人で軽くハグをする。
「それにしても恵ちゃん、変わらないわね」
「うん。3年前に会ったときとおんなじね」
まあ、そうだろう。本当は今、高校一年生だからな。……って言うよりも最初、祠を拝んだときに俺の想像した幼い神様の容姿ってことで小学生高学年の背丈で具現化したんだった。なのでかなりロリい女子大生ってことになるな。
「背、伸びなかったんですよっ。だから変わらずですっ」
「そうだったんだ。……でもそれって考えてみればお得よね」
「そうだよ。……だってほとんど年取らない感じがするもの」
などと、こちらにとって都合の良い会話がされている。これも神力を使っての根回しの結果なんだろうな。
「そう言えば聞いてなかったけど、恵ちゃん、どこの大学通ってるの?」
「そうだよ。考えたら私も聞いてないよ」
すると恵ちゃんはここから2駅ほど離れたところにある東都総合大学の名前を告げるのであった。すると2人の従姉妹たちは驚きの表情になる。
「それって、私たちとおんなじ大学だよ」
「……そうだよ。そう言えば学校で恵ちゃんに似た人を遠くから見かけたことあった」
なるほど。
神力の根回しは相当なもので恵ちゃんが彩花ちゃんと沙也加ちゃんの通っている大学を突き止めるだけじゃなく、恵ちゃんがその学校で見かけた記憶まで操作しているようだな。
「ところでいきなりあれだけど、私たちの区別できる?」
「どっちが彩花でどっちが沙也加なのか判別できる?」
そう言って2人は俺と恵ちゃんに挑戦的な眼差しを向けてくるのであった。
同じ大学っていう設定なのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「師匠を追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。