439話 ただいまなのですっ。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
そして翌朝。
俺と恵ちゃんは神武寮を出た。
俺の荷物は軽い。
2~3日は泊まるつもりだったのだが、実家なので着替えはあるからだ。なので恵ちゃんだけがバッグを持っている。
だがその大きさはかなり手軽だ。
「それで着替えとかは大丈夫なのか?」
「大丈夫ですっ。このバッグには神力を使っているので家一軒分くらいの荷物は入りますよっ。なので着替えも十分なのですっ」
なんとも便利な力だ。
まあ、以前も林間学校に行ったときもリュックの中に入るはずもない大きさの手斧とか罠とか入れてたしな。
なので、本人が言う通り十分な荷物は入っているのだろう。
それから駅に到着した。
そこで俺たちは土産を買うことにした。まあ、実家だから気を使う必要はないのかもしれないが、手軽な箱詰めお菓子くらいならいいだろう。
それから俺と恵ちゃんは急行電車に乗るのであった。
電車の中はそれなりに混んでいた。
なので俺たちは座ることができず、ドアの脇に並んで立っていた。
「景色を見ているだけでも飽きませんっ」
「俺も久しぶりに見る景色だ。懐かしい感じがする」
神武高校に入学して以来、一度も帰ったことがないからな。帰宅するのは半年くらい振りだな。
そしてしばらくして、俺たちは自宅の最寄り駅に到着するのであった。
夏の太陽は頭上で輝き熱波を地上に送っている。そして辺りからはシャワシャワとしたセミの大合唱が鳴り響いていた。
「割と落ち着いた街ですねっ。駅の近くなのに木もいっぱいありますっ」
「まあ、田舎だからな。昔は森ばっかりだったところに線路を引いて、その後開発された街だ。川の方へ下って行くと、まだ田んぼがいっぱいあるぞ」
そうなのだ。
この街はいちおう”市”になってはいるが、元々は小さな村だったらしい。だが昭和の景気が良い頃に住宅地がどんどん建てられて一気に人口が増えたと学校では習った。
まあ、典型的な東京のベッドタウンってやつだろうな。
そして駅から20分程度歩いて住宅地に着いた。
そこは戸建ての家々が建ち並ぶ閑静な住宅街だった。そしてその角地にある狭いがちゃんと庭付きの家屋の前へと到着した。
「ここですかっ? 和風のいいお家ですねっ」
「ああ。造りは古いがな。周りの家は建て直しで洋風になっているものばかりだが、俺の家は親父とお袋が和風派でな。修理はなんどもしたがほぼ購入時の原型を保っているんだ」
そうなのである。
この家を俺の両親が買ったのだが、当時中古住宅として販売されていた築30年のものだった。それを傷んだところを直しながらずっと住み続けているのだ。
そして俺は玄関扉に手を伸ばそうとした。すると中から会話している声が聞こえてきたのだ。どうやら玄関から誰かが外に出ようとしているようだ。
すると扉がガラリと横に開き、中からお袋が出てきたのであった。
「あら、大吉。今、来たのね」
「おう。久しぶりだ。お袋、今、帰って来たところだ」
半年ぶりに見たお袋に変化はなかった。いつも通りの40代の姿だ。だがそのお袋の様子が変だった。俺を見て、そして俺の隣に注目したからだ。
……しまった。
俺は恵ちゃんがどういう立場でこの家に来るのか最終確認していなかったのだ。幼馴染は通用しないと伝えてはあるが、それに対して恵ちゃんはちゃんと考えがあると言ってはいた。だがその答えを聞いていなかったのだ。
俺は額から暑いのに冷や汗がつたうのがわかった。
だが、恵ちゃんはニッコリと笑みを浮かべると口を開き、とんでもないことを発言したのである。
「お母ちゃん。ただいまなのですっ」
自宅へ帰宅したのですっ。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「師匠を追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。