438話 母親から連絡が来たのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
我に返ると俺たちは部屋で意識を取り戻していた。
部屋の中はログイン前と変わらずで、ちゃぶ台の上のPCにはスピリット・クエストのタイトル画面が表示されていて、謎の卵は今は光ることなく安置状態だった。
「戻って来たな」
「そうですねっ」
「なんか不思議な体験だったわね。ゲームの中にいたときはそこが現実だと思っていたけど、こうして戻るとやっぱりこっちの方が現実なんだとわかるわ」
辻神呂姫ちゃんがそう言うのはわかる。
俺も初めてこのスピリット・クエストにログインしたとき、そう思ったからだ。
やっぱり謎の卵が関係しているのは間違いないんだろうが、よりリアルに体験できるので今のところ不満はない。
まあ、気にはなるけどな……。
「楽しかったわ。私は帰るから。……またプレイするときは呼んでね」
そう言って呂姫ちゃんは神武寮から去って行った。
俺たちはいちおう玄関まで見送りに出ていたのだが、呂姫ちゃんの背が見えなくなると自室へと戻るのであった。
それから食事をしたり、部屋でテレビを観たりしながらのんびりと過ごす。
そんなときだった。
「……おや? お袋からメールが来てるぞ。珍しいな」
「お母さんですかっ? なんの用事なんでしょうかっ」
俺はスマホでメールを開いた。
するとメールの送信先は間違いなく母親で、実家に帰って来るようにとのことだった。
「まあ、夏休みだしな。一度は帰ってみるか」
俺の実家は隣の県なので電車で1時間弱もすれば到着できる。その手軽さもあってなかなか帰ろうとしなかったのだが……。
「……へえ、彩花ちゃんと沙也加ちゃんが来てるんだ。珍しいな」
「どなたですっ?」
「俺の従姉妹だ。双子で俺よりも3つ上だ。確か大学生になっているはず」
「へえ、年上の従姉妹のお姉さんたちですねっ? 美人さんなんですかっ?」
「……まあ、身内びいき込みになるが綺麗な女性だと思うぞ」
俺はしばらく会ってない従姉妹たちを思い出す。前に会ったのは俺が中学生になったばかりのときだったから、もう3年前か……。
そのときは彩花ちゃんも沙也加ちゃんも高校生だったが、かなりの美少女だった。二人とも同じ高校の同じクラスになったので、クラスメートたちから見分けがつかないと言われていると言っていたことを思い出すのであった。
「じゃあ、返信しておくか。帰るのは明日でいいか。……ちなみに恵ちゃんはどうするんだ? ひとりでこの部屋に留守番してるか?」
「もちろんそんな訳ありませんっ。私も着いていきますよっ」
「な、なんだって……。お前を連れて行ったら、どう説明すればいいんだ?」
「それはそれ。神力を使いますから問題ありませんよっ」
なんてことだ。
このダメダメ女神は俺の自宅にいっしょに来る気満々なようだ。
「でも、どう説明するんだ? 今までみたいに幼馴染って手は使えんぞ」
「大丈夫ですっ。楽しみにしてくださいっ」
そう言って恵ちゃんは満面の笑みを浮かべるのであった。
俺は、半ば諦めモードになるのだが、まあ、本人がなんとかするって言っているんだから、なんとかなるんだろうと思うしかないのであった。
実家から帰ってこいと連絡が来たのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「師匠を追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。