432話 お礼に武器をもらったのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
■
「おお、勇者様。ライラを連れて帰ってくれたのですね。ありがとうございます」
これは村長だった。
まずはイベントクリアのことを伝えるために村長宅に行き、それからライラの自宅へと連れ帰るつもりだったのだが、なんと村長は村の入口で待っていたのだ。
この辺りはさすがゲーム世界と言うべきか。
「ああ。ライラは無事に保護した。これから母親の元に連れて行く」
「お願いしますじゃ」
頭を下げる村長に手を振り、俺たちはライラの自宅へと向かうのであった。そして到着したライラの家。
粗末な造りの家の中に入ると陰気な雰囲気が漂っていた。薄暗く空気がどんよりしている感じ……。
やはり重病の患者がいるためか、そういう演出なんだろう。
「……ごほ、ごほ。……まあ、ライラ」
寝室に到着するとライラの母親が苦しそうにしながらも上半身を起こした。顔はやつれていたが、娘の無事を見て嬉しそうだった。
「まずは薬草を飲ませてくれ」
「はい。わかりました」
俺が頼むとライラが母親に”上等な薬草”を飲ませる。すると母親の身体全体が一瞬白く光る。そして次の瞬間には血色の良い笑顔の姿になるのであった。
この辺りはさすがゲーム世界だ。
「勇者様、使徒様、そしてお付きの方。ライラを助けるだけじゃなく薬草まで持ち帰ってくださり、ありがとうございます。……そうです。なにかお礼を……」
そう言った母親はすっとベッドから立ち上がるとすたすたとクローゼットまで向かう。どうやら病気は完全に完治したようだ。くどいようだがさすがゲーム世界だ。
そしてクローゼットの扉を開けると1本の片手斧を取り出した。それは白銀に輝く立派なもので、柄には魔石と思われる輝く石がいくつも埋め込まれている素晴らしい造りの斧だった。
「これをお礼に差し上げます。我が家に代々伝わるものですが、勇者様に使っていただければ先祖も喜ぶと思います」
最初は辞退した。見るからに高価そうなものだからだ。だが母親の押しは強く、結局断れずに受け取るのであった。
そしていつまでも頭を下げ続ける母親とライラに挨拶をすると俺たち3人は家を出るのであった。
「なんかすごい斧ですねっ。装備したら強くなれるんじゃないですかっ」
「まあ、いいものではありそうだ。……そうだ。鑑定してみるか」
俺は手に入れた斧を掴んで鑑定してみる。
すると”賢者の斧”と表示された。なぜ斧なのに賢者なのか不明だが、そこはゲーム世界。納得することにしよう。
表示された内容を更に読み進めていく。
「……げ。これ本来ならばゲーム終盤に登場するような武器だぞ」
そうなのだ。
この片手斧は威力がすさまじいだけじゃなく、炎の属性を持っていて斬りつけると斬撃だけじゃなく、炎攻撃も同時に行えるものだったのだ。
「私、疑問がある。……なんでこんなすごい武器がライラの家にあるのよ。そんな武器って本来、王家の秘宝とかじゃないの?」
ロキの疑問はもっともだ。
あの貧しい家にあるようなものじゃないのは同意だ。第一、こんな武器が家にあるのであれば、売って豊かな暮らしをすればいい。
だけどここはゲーム世界なのだ。リアルさを求めてはいけない。俺はそう説明するのであった。
「これで残るイベントはひとつですねっ」
「ああ。王都に繋がる街道に出現する魔物討伐だったな」
村人から得た証言によれば、二足歩行の魔物が数匹見かけたとのことだ。元々王都には行かなければならないし、ちょうどいいのでクリアを目指すつもりだ。
それから村の店で食べ物を買い、広場で食事を摂る。
「じゃあ、そろそろ行くか」
「わかりましたっ」
「ちゃっちゃと片付けてしまいましょう」
俺たち3人は意気揚々と街道へ足を踏み出すのであった。
すごい斧をもらったのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




