424話 イチバーンメの村に到着なのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
村の入口に着いた。
丸太でひっくり返した”コ”の字型になっている門があった。そしてそこに看板があったのである。
「……なんかいいのか、これで?」
「いいんじゃないですかっ。わかりやすいですっ」
「はぁ……そうね。これじゃこの後に登場する村の名前も簡単に想像がつくわ」
そうなのだ。
看板には”イチバーンメの村”と表記があったのだ。”はじまりの村”から最初に訪れる村だからイチバーンメなのだろう。
門を潜り村に入る。
入ったすぐに円形の広場があり、小さな子供たちが走り回り、切り株で作られた粗末なベンチにはお年寄りたちが集まり日向ぼっこをしていた。
「こんにちは勇者様。イチバーンメの村へようこそ」
声をかけられたのでその方角を見ると、麦わら帽子に鍬を手にした農夫の青年が立っていた。どういう仕掛けか知らないが俺が勇者だと、もうこの村の住民には周知されているようだ。
「こんにちはっ」
「いい村ね」
「こんにちは。……ちょっと聞きたいんだが村長の家はどこだろうか?」
すると青年は村の奥に見えるこの村でいちばん大きい2階建ての建物を指さした。
「あそこが村長の家です」
なるほど。まあ村長は村いちばんの権力者なのだから、いちばん大きな屋敷に住んでいるのは当たり前だろうな。
俺たちは青年に礼を述べ、村長宅へと歩き出した。
「どうして村長の家に行くのですかっ」
「情報収集だ。村人ひとりひとりに聞いて回るのも手だが、時間がかかる。村の情報なら村長に直接尋ねるのがいちばんの近道なんだ」
俺は簡単に説明する。
村人たちも情報は持っている。だがそれらはまばらな手がかりのひとつに過ぎない。だが、村長ならばまとまって整理された情報を持っているのだ。だからズバリ、村長に訊くのが手っ取り早い。
だが、そんなときだった。
「あっちの家で病気の人がいるみたいですっ。咳が止まらないようですっ。行ってみますっ」
そう言い残すとメグミが一目散に手近な小屋程度の家屋に駆け足で入ってしまったのだ。俺とロキは困り顔で互いを見合わせたが、あきらめの表情になる。そして家へと向かう。メグミを置いて行くことはできないからな。
……まったく言った側から寄り道しやがって。
家の中は質素だった。生活に必要最低限のモノだけがあり、そして粗末なベッドにはまだ若い女性が横たわっていた。
メグミが言った通りに咳が止まらず苦しそうだった。
「はぁはぁ……。こ、これは勇者様。……お見苦しいところを……」
息も絶え絶えに女性は言う。顔は青ざめていて身体も痩せている。
話を聞くと高熱と咳が続く”熱咳病”と言う風土病に罹ってしまったとのことだ。家族に小さな娘がひとりいるのだが熱咳病に効く”上等な薬草”を採りに山に行ったきり昨日から戻っていないらしい。
しかし、それ以上の情報は聞けなかった。女性が激しく咳き込んでしまい会話ができなくなってしまったからだ。
「それは大変ですっ。すぐに助けに行きましょうっ」
人が良いのがメグミの利点ではある。だが山と言ってもどこの山なのか、そしてどういう辺りに”上等な薬草”が生えているのかがわかったいないだろうが。
なので俺は慌てて家から飛び出そうとするメグミの襟首を掴むのであった。
「まあ、待て。その件も込みで村長宅に向かうんだ。行動するのはそれからだな」
俺の言葉にメグミは渋々納得する。そして俺とメグミ、ロキは奥に見える村長の屋敷に向かうのであった。
最初の村に到着なのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。