423話 互いの父親の消息なのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
うん、旨い。
そう思って俺はサンドイッチにぱくついて牛乳を飲む。
「美味しいですっ」
「そうね。サンドイッチも牛乳も温くなっていないし美味しいわね。……あれ? これってもしかすると」
そこまで言ったロキが言葉を止めた。なんだろうと思って見ると少し考え顔だ。だがやがてなにかに気づいたのか口を開く。
「このゲームシステムで使えるアイテムボックスは保存が効くのね。……って言うかたぶん時間停止で食べ物が傷まない仕組みなのかも」
「どうして、そう思うんですかっ?」
「だって、買い物してから1時間は経過しているのよ。なのにサンドイッチも牛乳も冷えたままじゃない」
なるほど。
確かにロキの言う通りだ。気温はどちらかと言えば温かいぽかぽか陽気だ。なのに確かに食べ物は温まっていない。
「時間が経つと腹が減るゲームシステムだと言うことを考えると、だとしたら買えるときに買いだめしておいた方がいいな」
「なるほどですねっ。お店はいつどこで見つかるかわかりませんからねっ」
「時間停止ならば、例えば熱いスープはほかほかのまま保存できることになるわね」
こうして俺たちはこのゲーム世界ならではの処世術を学ぶのであった。
そして食事を終えた俺たち3人は再び王都への旅を再開する。
■
「そう言えばなんですけどっ」
街道を3人で歩いているときだった。メグミがなにかを思い出したようで、突然口を開いた。
「このゲーム世界での私のお父さんなんですが、先代の勇者パーティのメンバーだったそうですっ」
「お、そうなのか? ……実は俺の親父という設定の人物もそうだったようだ。なんでもここいら辺でいちばんの戦士だったとのことで勇者にスカウトされたようだ」
「そうなんですねっ。戦士とはすごいですっ。私のお父さんはボケとツッコミが上手だったそうで、勇者の話し相手としてスカウトされたようですっ」
「……なんだそりゃ」
メグミによると、勇者も長い旅を続けているので、時には話し相手が欲しいらしい。それもできれば話し上手で聞き上手な人物を望んでいたようだ。
まあ、確かに旅は賑やかな方がいいだろうな……。
時期的に考えても隣同士のいう立地から考えても、どうやら俺の親父とメグミの父親は同時にスカウトされたと思われた。
「で、その先代勇者ってのはどうなったのかしら?」
ロキがそう尋ねてくるのだが、俺とメグミは同時に首を左右にふる。
「どうやら行方不明らしい」
「魔王は倒されていないので、まだ冒険の途中なのか、それとも残念ながら、のどちらかですっ」
「なるほどね。……ま、旅を続けていれば会えるかもしれないわね」
その可能性もある。
とにかく情報がないのだ。わかっているのは遥か遠くの彼方にある魔王の城に向かったことだけだ。その後の手がかりは一切知らされていないので軽々しく断定はできないのだ。
それから街道を進むことしばし。
王都まではまだかなり距離を残しているのだが、村が見えた。街道から脇道に入った先に木製の柵で覆われた10件程度の建物が固まって建っているのがわかる。
「村ですねっ。どうしますかっ?」
「行ってみましょうよ。店もあるんじゃないかしら?」
「そうだな。なにか情報も手に入るかもしれないしな」
そして俺たちは脇道に逸れて村へと向かうのであった。
とにかく情報が足りないのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。