422話 戦士の剣は使えるのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
それから俺たちは、はじまりの村を出ることにした。
ここはあくまでスタート地点、まだ冒険すらしていないのだ。なので村の出口付近にあった青白く光る半透明のセーブポイントではセーブだけにとどめ、ログアウトはしなかった。
村を出る。
すると左右には遥か彼方まで草原が広がっていた。だが土でできた街道はあるので道に迷うことはない。このまま道なりに歩いていけば王都へ到着することができるのだ。
そして魔物が登場した。街道の行く手を塞ぐかのようにスライム5匹が固まっていたのだ。俺はすぐさま手に入れたばかりの”戦士の剣”を抜剣する。
「丁度いい。この剣の切れ味を試したいんだが」
「いいですよっ。スライムですしっ」
「いいわよ。スライムだから興味ないし」
女神たちには散々な言われようだが、構うことはない。俺は弱いのだ。まずは最弱のスライムで試してみるのは悪くない。
「じゃあ、行くぞ! ていっ!」
俺は先頭のスライム相手に上段に振りかぶった”戦士の剣”を叩きつける。すると手応えがあった。スライムがぐにゃりとひしゃげて吹っ飛んだのだ。ダメージはちゃんと入ったみたいで、潰れた形のまま復元していない。
「お。いい感じだぞ」
そして2匹目、3匹目と次々と俺は剣を振るった。どのスライムにもダメージを与えふっ飛ばしている。しかしどのスライムにも致命傷は入っていない。
なので、手当たり次第に俺は剣を振り回し切り刻んでいく。そして1匹、また1匹と倒すことができた。倒したスライムは数枚の銀貨と引き換えに光の粒となって消えていく。
「はあ、はあ……。倒したぞ」
「お見事ですっ。前よりも早かったですねっ」
「そうね。……まあ、10分くらいかかったけど、ひとりで倒せたのは意味があるわね」
ちょっと皮肉が入っているが、まあ、いいだろう。
それよりもだ。俺は前に”旅人の剣”で戦ったときは1匹のスライムを倒すのに10分くらいかかっていたのだ。
それが今回は5匹相手に10分だ。ちゃんと”戦士の剣”の効果が出ているのは間違いない。
その後もしつこいくらいに魔物が現れた。間隔としては5分に1回くらいか。
しかし俺の出番はない。なぜならば登場したのがジャイアント・ボアの群れとグレート・ベーアの群れだったからだ。
いくら俺が強い武器を手に入れたとしても、こいつらには敵わない。なので当然、女神たちの登場となる。
ジャイアント・ボアの群れはメグミが雷の魔法で一捻り。グレート・ベーアの群れは炎の魔法で瞬殺だった。
そしてその結果、またしても数千枚の銀貨が手に入ったのである。
「なんか楽ちんなゲームですっ」
「そうね。でも魔物を倒すのは快感ね。スキッとするわ」
「なに言ってんだ。お前らが思いっきりチート設定だからだろうが」
俺はそうツッコミを入れるのだが、女神たちはどこ吹く風だ。ま、俺としてもメグミとロキの存在は冒険に必須だし、俺だけじゃ絶対に手詰まりになっているだろうから仕方がないんだがな。
「……なんか、お腹がすきませんかっ?」
歩いてまだ30分ほど。見通しがいいので振り返れば村がまだ遠くに小さく見えている。そんなときメグミが突然にそう言ってきたのだ。だがそれはメグミだけではなかった。
「そうね。……確かに私もお腹がすいてきたわ」
なるほど。
言われてみれば俺もなんだか腹が減っている。
「本来、スピリット・クエストには食事の要素はないんだが、もしかしたら、これもこのゲームの仕様なのかもしれないな」
「かもしれませんねっ。現にお腹減りましたしっ」
「まあ、食べ物が売っていた時点で、そういうことなんでしょ」
俺たち3人は原っぱに腰を下ろし、店で買ったサンドイッチと牛乳を取り出すのであった。
まともに戦えたのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




