421話 村の店で旅立ちの準備をするのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
それから俺たち3人は、このはじまりの村唯一の店に向かった。
そう、この村唯一の店は武具とアイテムの店なのだ。食料や衣料の店などない。それはそれ、ゲームの世界なのだ。すべてがリアルである必要はない。主人公が必要な店だけが用意されているのだ。
店は通りに面した平屋の一軒家だ。軒先の天幕が張り出しているのと剣と盾の木製看板があるのですぐにわかる。
「ようこそ、いらっしゃいました。……って、ダイキチとメグミじゃねえか。それに綺麗なお嬢さんは連れか? いったいなんのようだ」
俺とメグミとロキが武器とアイテムの店の前に立つと、まあ、当然顔見知りの設定である村人の店主のおっさんが声をかけてくる。
「ちょっと買い物にな。……で、どれどれ?」
俺たちは店頭に並べられている商品を見た。
剣や弓矢などの武具や盾、鎧などの防具はもちろん旅に必須な薬草類などもあった。
「薬草が1つで1S、……毒消し草が1つで2S。……Sってなんだ?」
「お金の単位でしょうかっ」
「ああ、わかったわ。Sってシルバーの略じゃないかしら? 通貨は銀貨みたいだし」
なるほど。ロキの言うことには説得力がある。確かに銀貨なのでシルバーってのは考えられる。
「なあ、薬草が1Sってことは銀貨1枚ってことでいいのか?」
「そうだ。……言っておくが値引きには応じないぞ」
店主が顔を引き締めて言う。まあ、俺もゲーム世界で値引き交渉しようとまでは思っていない。
だが、どうしても欲しいモノでお金が足りなかったらするかもしれんがな。
「なあ、……俺たち、もしかして金持ちなんじゃねーか?」
「そうですねっ。薬草が7000個以上買えますねっ」
もちろんそんなに薬草はいらないんだが、言いたいことはわかる。
「今、確認したんだけど、システムのアイテムボックスに入っている銀貨は全部で7521枚と表示されてるわよ」
ロキがそう得意げに告げる。
……なんてことだ。薬草の束がひとつ100円だと換算すると、俺たちは今、日本円で総額75万円以上持っていることになる。
ただ、精霊の祠に行って帰って来ただけのわずかな冒険でこれだけ稼いだことになるのだ。
そして俺は更に品揃えを見る。すると立派な剣が目に入った。頑丈で良く切れそうな剣だ。見た目も上質で表示には”戦士の剣”とある。その価格は1000S。
……嘘だろ? 買えるじゃん。
「その目は欲しがってますねっ」
「結構するわね。いい品なのかしら?」
「ああ。本当ならゲームの中盤で売られているいい剣だ。まさかはじまりの村で売っているとは思わなかったが」
そうなのだ。
”戦士の剣”は本来ゲーム中盤に登場する。主人公がだいたいレベル25くらいになった辺りで行ける街の武具屋で売られているものだ。
なので威力もあるのだが、値段もそれなりに高いのだ。だが、今、俺たちは手持ちのお金で余裕で買えてしまう。
「いいんじゃないですかっ」
「そうね。それを装備すればダイキチもそれなりに強くなりそうだしね」
2人から許可が出たことで俺は”戦士の剣”を買うことにした。後、薬草や毒消し草なんかも適量買った。
そんなときだった。
「あれ? 食べ物も売ってますねっ」
メグミが店の奥を指差すと確かに陳列棚に食品が売られているのであった。見たところサンドイッチのようだ。
店主に尋ねるとたまに売れるとのことで飲み物として牛乳も売られているとのことだ。
「旅の途中でお腹がすくと困りますねっ」
「そうね。それにサンドイッチなら手軽だし、いいんじゃないかしら」
女神2人が勧めるので、俺はサンドイッチと牛乳も人数分買うのであった。
”戦士の剣”を買ってしまったのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。