42話 開き直りです。
【毎日昼の12時に更新します】
この作品には以降のストックがありません。
そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。
すみませんが、よろしくお願いいたします。
この物語は毎話毎話が短いです。
それは4コマ漫画のようなテンポの良さ、余韻を全面に打ち出しているからです。
……決して、私の手抜きではありません。
……きっと。
そして我に返った先生が何事もなかったかのように立ち上がるとここを去った。
再び生徒たちの席の巡回を始めたようだ。
「……私、ちょっとお花摘みに……」
「あ、私も行こうかな?」
それから澤井さんと河合さんが席を立った。
どうやらトイレにでも行くらしい。
なのでここには俺と恵ちゃん、そしてトイレから戻った新井がいるだけとなった。
女性陣が去ったことで恵ちゃんが再び俺の隣の席へと戻って来た。
もちろん俺はそこでいつものお約束を頭に落とす。
「……で、どういうつもりなんだ?」
「はう。……毎回毎回手刀で叩かないでくださいよっ」
涙目で恵ちゃんが俺に訴えかけてきた。
「お前、また神力使っただろ?」
「……し、知りませんよ。
みんな大吉さんの魅力にメロメロになっただけなんじゃないですかっ!」
「バカを言うな。
ただのババ抜きのやり取りの言葉で惚れる女がいるかっ?
それに若杉先生はトランプしてないだろうが?」
すると恵ちゃんはまたもや調子っぱずれの口笛を吹いたので、俺はもう一回コツンと手刀を落とす。
「痛いです。降参します。白状します。
でもホントにそれ、痛いんですよっ」
「それは毎回毎回、神力使って妙なことをするからだ。
しかも今回は若杉先生にも使っただろ?」
「そうです。使いましたよ。だって当たり前じゃないですか?」
まだ痛むらしい頭の天辺を抑えながら恵ちゃんが開き直って俺に抗議してくる。
「なにが当たり前なんだ? 納得がいく説明をしてくれ」
「わかりました。説明します。
……澤井さんも河合さんももう子供が作れる身体です。
そして若杉先生も成熟した立派な女性です。
元気な赤ちゃんを産めるからです」
「勝手なことをするな。
もしかしたら先生には恋人や婚約者がいるのかもしれないだろ?」
すると恵ちゃんはその薄い胸を自慢気に張って宣言した。
「いません。調査済みです。そしてもちろん澤井さんも河合さんにもいません。片思いの相手もいません。だから無問題なんです」
「なにが無問題だ。……それにだ。日本は一夫一妻制だぞ。一辺に三人もけしかけるな」
俺はそう言って恵ちゃんの額を指先で突いた。もちろん軽くだ。
「はう。……軽くでも痛いですよ。……数撃ちゃ当たるです。
それに一夫一妻制でも妾に産ませて認知するのは問題ないんですよっ」
「……はあ。……あのなあ」
俺は根本的に徹底的に恵ちゃんの認識のズレを訂正しなくてはならないようだった。
それに第一、この新幹線の車内でこいつは俺になにをさせようとしたのか?
まさかここで裸になって行為でもさせるつもりだったんだろうか?
本当なら手刀を十連打くらいお見舞して心底反省できるように叩き込むべきなんだろうが、それも人目があるので遠慮しなくてはならない。
人目とは目の前で小声でやり取りしている俺たちを不思議そうに見ている新井のことだ。
ん? 待てよ?
俺はそこで疑問を感じた。
恵ちゃんは神力で人の考えや行動を支配できるはずだ。
ならばさっきの場面で新井が戻ってこないように操ることもできたはずなのだ。
「……なあ、新井のヤツはなんでさっきトイレから戻ってきたんだ?
まだ帰ってこられないように支配することもできただろ?」
すると話題が変わって手刀を受けないですむことで安心したのか恵ちゃんが、ホッとした表情になって説明してくれたのであった。
「体質の問題なんです。
私はホントは新井さんに五時間は腹痛でトイレから出られないように神力をかけたんですが、効き目がほとんどなかったんです」
「な、なんだそれ? 神力が効かない相手っているのか?」
「います。それが体質なんです。
具体的に言うと、今からもこれからも女性にほとんど縁がない男性です」
真顔で恵ちゃんがそう告げたのであった。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。