419話 はじまりの村に到着なのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
「圧倒的だな」
「当然よ」
ドヤ顔になって腕組みをするロキ。すると腕に押し上げられて、そのたわわがこんもりと盛り上がってしまう。
俺は思わず目が泳ぎ、地面を見てごまかしたが、ロキから軽蔑の眼差しが向けられなかったので、どうやら大丈夫だったようだ。
「……まあ、拾うか」
「そうですねっ」
「……それにしても、たくさんの銀貨ね」
3人で拾うときロキがそう呟く。
そうなのだ。それも俺がこの世界のゲームバランスがおかしいと思っているひとつなのだ。まだ通貨の価値を確かめてはいないのだが、いくらなんでも初期に登場する魔物としては落とす銀貨が多過ぎるのだ。
大量にあり過ぎて数え切れていないのだが、3人で集めた銀貨の数はどう見ても5000枚くらいあるだろう。
俺はその疑問をロキにも伝える。
「すごいインフレが起きていて、この銀貨でも食事1回でなくなりました~、ってなってないといいわね」
「だな。まともな経済状態であることを祈るよ」
これでこの時点で手に入れた銀貨はすでに7000枚くらいになっている。でも重くて持ち運べないとはならない。
この世界はRPGゲームなのだ。小さな腰のバッグにいくらでも入るようになっているし、重さも感じない。この辺りはさすがゲーム世界で便利だな。
■
それから俺たち3人はどんどん坂道を降りて行く。そして何度かの戦闘を挟み、山道を降り終えたのであった。
戦闘はもちろんメグミとロキの強力な魔法で一撃で終わっていた。
「ああっ。やっと見えましたっ」
「そうだな」
「あれが、はじまりの村なのね」
俺たち3人は村の入口へと到着した。そこには門代わりに左右に太い柱が建てられている。するとその先、つまり村の中に長老が立っていた。頭髪がなく長い白髭を伸ばして杖をついている老人の男性だ。
「おお。ダイキチ、メグミ、無事に戻ったな。……おお。なんとその御方は……」
長老が驚愕のあまり身体を硬直させてしまった。そのまま岩のように動けない状態である。
俺は、心配になり、軽く長老の肩を揺すってみた。すると長老は息を吹き返すのであった。
「……な、なんと……、使徒様もご一緒とは……」
なるほど。それに驚いていたのか。
確かに考えてみれば精霊の祠に成人の挨拶に行った帰りに、精霊の使徒も一緒だと驚くのも無理はないか……。
中身は邪神なんだけどな。
「長老よ。此度は縁あってダイキチとメグミに同道することに相成った。そのように心得よ」
ロキが芝居がかった口調でそう告げる。すると長老はその場で平伏してしまう。どうあっても使徒と言うのは崇める存在のようだ。
仕方がないので俺とメグミで手を引いて立ち上がらせた。
「長老さんっ。大丈夫なのですっ。ロキはすでに仲間なので気にしなくていいのですっ」
それから俺とメグミは、ロキが元々知り合いだったことや、正体は邪神であることを伏せて、祠で出会ってからの経緯を説明した。
長老は、おお、おお、と、いちいち感動してしまうので話が進展せず、なかなか説明は終わらなかったのだ。
その後、俺たちははじまりの村へと入った。
見回すと家々が7軒ほど。目に付く人々は10人程度。申し訳程度の畑があり、村の中央には村共用と思われる井戸もあった。
この人数とこの規模で人々が暮らせていけるのだろうかと思ってはいけない。ゲームの世界にそこまでのリアルを求めてはいけないのだ。
ただ、ここには主人公が生まれ育った背景としての舞台がある。そう理解できればいいのだ。
どうやら使徒は偉いのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。