410話 ナンパ野郎たちの登場なのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
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それから俺たちは休憩を取る。
25メートルプールで思いっきり真面目に泳いだので、ちょっと疲れたのだ。
あれから恵ちゃんも懲りたようで、神力を使った男女抱擁を俺にさせることもなく、平和に過ごせたのであった。
澤井さんが用意してくれたレジャーシートを木陰になっている場所に敷いた。そしてくつろいでいると喉が渇いていることに気がついた。
見ると流れるプールの向こう岸に売店があるのがわかった。軽い食事や飲み物を売っているのだろう、それなりに列が出来ている。
「ちょっと混んでるが許容範囲だな。……よし、飲み物でも買って来るか」
「わかりましたっ。私も付き合いますっ」
俺が立ち上がると恵ちゃんも立ち上がった。どうやら俺ひとりでは持ちきれないので手伝ってくれるようだ。
だが、俺は首を振る。
「いや。荷物が重くなるので恵ちゃんは待っていてくれ」
「なんと……。大吉さんは優しいんですねっ」
うるうる目で恵ちゃんが身を捩る。相当に感激したようだ。
だが、それは間違いだ。
恵ちゃんが小柄なので心配したかのように思えただろうが、真実は違う。恵ちゃんはドジっ子なのだ。飲み物が入ったトレーなんて持たせたら、なにかに引っかかって転んで飲み物をぶちまけそうだからな。
だが、俺のイメージ向上になっているこの状態を壊すこともないので、俺は黙っていることにする。
そして俺の後方で座ってぼんやりとしていた新井に声をかけた。
「新井。いっしょに来てくれるか?」
「あ、僕? いいよ」
女子の役に立つのだ。新井も嫌な気分にはならないようだ。
そして俺と新井は流れるプールを迂回して売店へと向かうのであった。
売店は混んでいた。
まあ、プール全体がこれだけの人の入りなのだ。売店が混み合っているのも無理はない。なので10分くらい待った。
そして氷の入った冷たい飲料を適当に人数分頼むのであった。コーラとかオレンジジュースとかいろいろな種類を選んだので、後はみんなでそれぞれ決めてもらえばいい。
ちなみに俺は財布もスマホも持ってない。プールなのですべてロッカーに仕舞ったからだ。だけど入場の際に渡されたゴムバンド付きのタグを腕にはめている。
このタグのICチップを読むことによって料金がタグに加算されるのだ。そしてプール退場時に追加料金を払うシステムになっていた。
こういう施設でのキャッシュレス決済は実にありがたい。
そして俺と新井でトレーに乗せた紙コップを運ぶ。俺たちは合計6人なのでひとり3つずつトレーで運ぶことにした。
そして流れるプールを回り女性陣が待つ場所へと近づいたのであった。
だが、そこでトラブルが発生していた。
見知らぬ3人の若い男が女性陣に馴れ馴れしく話しかけていたのだ。どうやらナンパのようだ。
目当ては呂姫ちゃん、澤井さん、河合さんのようだ。……まあ、どう見ても恵ちゃんはよくて中学1年生、下手すると小学生に見えるからな。奴らの興味対象からは外れているようだ。
「なあなあ、俺たちと遊ぼうぜ」
茶髪のチャラ男Aがそう女の子たちを誘う。
「そうだよ。こんなとこで座っていてもつまらないだろ?」
金髪のチャラ男Bが手を伸ばす。どうやら女の子たちから手を伸ばされたら引っ張り上げるつもりのようだ。
「俺たちといっしょだと楽しいぞ。プールの後で飯奢ってやるよ。好きなもん食べていいぜ」
ロン毛のチャラ男Cが食欲に訴えて誘っている。今どきそんなんで初対面の男に着いていく女なんているか?
「しつこいですね。私たちに構わないでください」
「そうよ。私たちには連れがいるの。だからどこかに行ってよ」
澤井さんと河合さんが心底嫌そうに断る。だがそんな態度を見せてもチャラ男たちはニヤニヤ笑いを止めない。そしてその顔は女の子たちの身体を絶えず注視している嫌らしい目つきだった。なので澤井さんと河合さんは胸元を両手で隠して、下も足を交差させて見せないようにしている。
そして女神である恵ちゃんと呂姫ちゃんだが、澤井さんたちになぜだか加勢せずにいた。見ると2人ともほくそ笑んでいる。これはなにかを企む目だ。
そんな呂姫ちゃんだからだろうか、呂姫ちゃんは水着姿を一切隠すことなくチャラ男たちに見せつけていた。大きな谷間もエグいほど切れ込んだ下のビキニもだ。
なのでチャラ男たちの視線は無遠慮に呂姫ちゃんに集中する。だが呂姫ちゃんはどこ吹く風だ。
「いい加減にしないと、あんたたちひどい目に遭わせるわよ」
「そうですよっ。このままさっさとどこかに行けば、許してやりますよっ」
呂姫ちゃんと恵ちゃんが落ち着いた声でそう告げる。
するとチャラ男3人は互いの顔を見て、やがてギャハハ笑いをする。どうやら自分たちが何者を相手にしているのかわからないようだ。
ま、実際、わかるはずがないよな。まさか相手が神様なんて予想すらできる訳がない。
「加茂くん、助けに行かなくていいの?」
「ああ、心配はいらない。……むしろ心配するとしたら、あのナンパ野郎たちの方だろうな」
新井が心配そうに尋ねてくるので、俺はそう答える。
俺はこの先の展開がなんとなく予想できるのであった。
チャラ男たちの襲来なのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。