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408話 河合香菜さんの予想外の行為なのです。

基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。

どうぞよろしくお願いいたします。


 

 そして恵ちゃんは泳ぎだす。

 だが、その泳法がちょっとおかしい。クロールでもない、平泳ぎでもない、背泳ぎでもないし、もちろんバタフライでもなかったのだ。




「犬かきかよっ!」




 そうなのだ。恵ちゃんは犬かきで泳いでいるのだ。だが、その速度は普通じゃない。手と足の回転が速いので猛然と進んで行くのだ。

 そしてその勢いは先に泳ぎだした呂姫ちゃんに迫るものだった。あのままではホントに追いつくんじゃないだろうかと思っていたらその後、なんと追いついてしまったのだ。

 犬かきがクロールよりも速いこともあるなんて、俺はまだ知らなかった現実を思い知らされることになったのだ。




「呂姫ちゃん、抜きますよっ」




 恵ちゃんがそう宣言するのが見えた。犬かきなので常に頭は水面の上だから話すことができるのだ。もちろん呂姫ちゃんの返事は聞こえない。まあ、クロールで泳いでいるんだから答えようがないからな。

 そして高速犬かきは綺麗なフォームを決めて泳いでいるクロールを右側から悠然と追い抜いて十分に距離が取れたのを後方確認すると左レーンに戻るのが見えた。

 あの勢いならば新井にも追いつくんじゃないだろうか……。




「加茂くん、行かないの?」




 おっと。

 恵ちゃんの泳ぎに注目していたことで俺はスタートするのを忘れてしまっていた。それを河合さんに指摘されたのだ。




「ごめんごめん、行くよ」




 俺はそう謝ってプールの壁を蹴る。そして両手を目一杯伸ばして水の中を進み、やがて左右の手を使って水を掻き、泳ぎ始めた。足も左右に開き水を蹴る。

 そう、俺の泳法は平泳ぎだ。

 俺はクロールができない訳ではないんだが、息継ぎのときに水面上に頭がちゃんと出る平泳ぎの方が得意だった。

 もちろんクロールほど速度は出ないのだが、別に競争している訳ではないので好きにさせてもらうことにしたのだ。




 息継ぎの度に前方を泳ぐ呂姫ちゃんが見える。そしてその前に犬かきで泳ぐ恵ちゃんが右側レーンに移動するのが遠くに見えた。どうやらもう新井に追いついてしまったようだ。そして澤井さんの姿は見えない。もう25メートルを泳ぎきってターンしているのかもしれない。




 そして俺だが速度は出てないが、それでも進んでいるには違いなくて、そろそろプールの真ん中付近まで泳いでいた。

 この辺りはプールでいちばん深いところだ。まあ、それでも120センチらしいので十分に足は底につくので溺れる心配は一切ない。

 そんなときだった。




 俺は右側後方に気配を感じた。

 俺の後ろを泳いでいるのは河合さんだ。どうやら俺に追いついて抜こうとしているのだろう。

 俺は競争するつもりはまったくないので自由に抜いてくれと思っていた。




 そして河合さんが右側の真横に並ぶ気配。見ると驚いたことに河合さんの泳法は背泳ぎだった。仰向けで水に浮かび左右の手を大きく伸ばしてリズミカルに回転させている。

 河合さんはスポーツ大好き少女なので、泳ぎも得意なのだろう。きっとクロール、平泳ぎはもちろんだが、バタフライなんかもできるんだろうな。




 そう思ったときだった。

 真横に並んでいたはずの河合さんの姿が突然に消えた。そしてそれは見間違いなんかじゃなくて、水しぶきも消えてしまっているので間違いなくどこかに行ってしまったのだ。




 ……えっ?




 俺は後方を振り返る。だがそこにも河合さんの姿はない。

 そのときだ。

 なにかの影が俺の真下に突如入ってきたのだ。俺はぎょっとして下を見る。すると水の中に誰かがいた。




 ……えっ? ……河合さん?




 そうだった。

 俺の真下で水中にいるのは河合香菜さんだった。河合さんは仰向けのまま水の中に潜っていたのだ。

 そして驚いている俺と目が合う。……いや、合った感じがした。河合さんは水中なので揺れる水面の歪みで、その表情をしっかりと視認できる訳ではないからだ。だが俺にはわかった。河合さんは水の中で笑顔を見せていたのであった。




 ……いったいなんのつもりだ?

 俺は泳ぐのを止めて、河合さんに意思確認をしようと思った。だがそれは一瞬で取り消した。俺が泳ぎを止めて足を底につけてしまおうとすれば、河合さんを踏み潰してしまうからだ。

 なので俺は怪訝な気持ちになりながら平泳ぎを続ける。

 そしてその直後だった。突如河合さんが大胆な行動に出た。なんと水の中から両手を伸ばして泳ぐ俺の身体にギュッと抱きついてきたのだ。




 俺はあまりにも予想外の河合さんの行動に慌ててしまい、足をプール底に付けて立ってしまう。

 そしてそのことで俺に抱きついたままの河合さんも水面から頭を出す状態となったのであった。

いきなりのことだったのです。(`・ω・´)∩


 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中


「生忌物倶楽部」連載中



「夢見るように夢見たい」完結済み


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。


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