407話 25メートルプールで真剣に泳ぐのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
流れるプールを堪能した俺たちはその後プールサイドで休んでいた。澤井さんがレジャーシートを用意してくれていたので、俺たち5人はそこに座ってくつろぐ。
「次はどのプールに行きますっ? 私は、あのでっかい滑り台に行きたいんですがっ……」
恵ちゃんの言葉は力なく終わった。
なぜならばウォータースライダーには大行列が出来ていたからだ。人の並びはぐるりとウォータースライダーを一周してしまっているのだ。
「あの混み具合だと、滑れるのに20分以上かかりそうだな」
「そうね。頃合いを見て空き始めたら行くのはどうかしら?」
澤井さんがそう提案してきたので、俺たちはそれに同意するのであった。だとすると流れるプールにもう1回入るか、泳ぎ専門の25メートルプールに行くかの二択になる。
「私、久々に真面目に泳いでみようかな? みんなもどう?」
元気いっぱいの河合香菜さんがそう提案してきた。考えてみれば俺も真面目に泳いだのは随分と前だ。たぶん中学校の水泳の授業以来まともに水泳をしていないはずだ。
「それもいいな。俺は行くよ」
「そうですねっ。私も久しぶりに泳いでみますっ」
「じゃあ、決まりね。私もつきあうわ」
俺と恵ちゃんと呂姫ちゃんが同意した。見ると澤井さんも新井も不満はないようなので、俺たちは25メートルプールに向かうのであった。
25メートルプールは空いていた。
他の流れるプールとウォータースライダーは混み合っているのだが、ここは真面目に泳ぐ人たちだけしか入っていないからだ。
立て看板を見ると、浮き輪もビーチボールも禁止されている。なのでここで水遊びをする人は誰もいないのだ。
よくよく見ると4、5人ほどがクロールや平泳ぎなどで泳いでいる。速度重視の人もいれば、のんびりと遠泳を楽しんでいる人もいるのだった。
「お、コースが広いな」
「そうですねっ。2つのコースを1つに開放しているんですねっ」
「速度が遅い人に追いついちゃう人もいるからじゃないかしら」
呂姫ちゃんの指摘に俺と恵ちゃんは頷いた。
なるほど。確かにクロールと平泳ぎでは元々スピードが違うし、例え同じ泳法でも個人によって速度は異なるしな。
なので高速道路と同じく左側が通常レーンで右側が追い越しレーンになっているようだ。見ていると、ちょうど同じクロールだが先頭に泳ぐ人の速度が遅く、後ろから追いついた別のクロールの人が右側に移動し、追い抜くのが見物できたのであった。
「なるほど。理解できた」
「そうですねっ。私は泳ぐのが速いので、ずっと右側で泳ぎますっ」
「……それはそれでルール違反だと思うぞ。高速道路でも追い抜くときだけ追い越し車線に入るって決まっているんだからな」
「そうなのですねっ。わかりましたっ」
俺と恵ちゃんの会話だ。
どうやら恵ちゃんはルールをわかってなかったようだ。速く泳ぐのならずっと右側にいてもいいと思っていたらしい。
だが、理解してくれたので一安心だ。
そして澤井さんと新井、呂姫ちゃんが順々にプールに入った。そして澤井さんを先頭に等間隔を空けて、それぞれ順に泳ぎ始める。
澤井さんも新井も呂姫ちゃんも、みんなクロールだと宣言していた。まあ、クロールがいちばん一般的な泳法だからな。学校の授業でもクロールばかりだったのを思い出す。
澤井さんの泳ぎは優雅であった。動作はそれほど速くないのだが効率が良いのか、すいすいと進んで行く。腕のストロークはしなやかに伸び、バタ足のキックは人魚のような優雅さだ。
本人は泳ぎは苦手と言っていたが、あれは謙遜だったんだろうな。
新井は、……まあ、あれだ。決して遅くはないので澤井さんとの差は開かない。だが泳ぎ方はストロークの腕は水中に入れたときにぜんぜん伸びていないし、バタ足は水面の上まで足が飛び出ている。まるで子供の泳ぎだ。
だが、回転は速いので速度は稼げている、そんな感じだった。
そして呂姫ちゃんは澤井さんの泳ぎと似ていた。
腕のストロークもすいすいと伸びていて、バタ足のキックも優雅だ。美少女に恥じない綺麗な泳ぎだった。
体育の授業も割とそつなくこなす呂姫ちゃんなので、泳ぎも得意なのだろう。
「じゃあ、次は私が行きますねっ」
そう言って恵ちゃんがプールの壁を蹴り、その小さな身体をいっぱいに伸ばしてコースを進むのであった。
真面目に泳ぐのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。