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406話 試される理性と神力の解除なのです。

基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

 ……う、ぐぐぐ。




 正直に言おう。

 澤井さんは俺の好みではある。ただドストライクと言う訳ではない。

 俺にだって好みの守備範囲はあるのだ。ただその範囲は広くて、その中に澤井さんもしっかりと入っているということだ。自分勝手な理屈だとわかっているが、澤井さんも好みの中のひとりという訳なのだ。

 なので、俺は理性を試された。




 ……む、ぐぐぐ。




 俺の唇は俺の意志とは裏腹に、ぐぐぐと澤井さんの唇に迫ってしまう。……だが、しかし、だけど……。

 ……ま、まずい。理性が負けてきた。

 ……くう。ど、毒を喰らえば皿まで……。




 目を閉じている澤井さんの綺麗な顔が間近に迫る。そしてほんのり桜色の形良い唇も眼前だった。

 ……も、もう駄目だ……。




 ……が、がはっ!

 だが、俺はなんとか両手に力を込めて澤井さんのその薄くて華奢な両肩を遠ざけた。すると澤井さんが目を開ける。




「……私じゃ駄目なの? ……私の胸、小さいわよね? やっぱり男の子は胸が大きい女の子が好きなのかしら? ……でも、100年以上も前では、胸が大きいのははしたないと言われていたのよ」




「胸じゃないんだ。……それに澤井さんは別に胸が小さい訳じゃない」



 そうなのだ。世間一般から比較すれば澤井さんの胸は決して小さい訳じゃない。……ただ、近くに存在する河合香菜さんとか辻神呂姫ちゃんが大き過ぎるだけなのだ。




「……なら? なぜ?」




 なんて答えるべきか。

 澤井さんは絶世美少女で確かに好みだが、平凡な俺とは釣り合わない、って月並みな返事じゃ納得してくれないだろう。

 じゃあ、なにか?

 澤井さんは好みだが、もっとたくさんの女の子と仲良くなりたいから、まだ特定の彼女なんか作りたくない、って言うか?

 それはあまりにも失礼だろう。

 それともあれか? 澤井さんは神力で操られているだけだと本当のことを伝えるか? いや、とてもじゃないが信じてもらえないだろうな。

 ……う~む。な、なんて答えればいいんだろうか……?





 そんなときだった。

 流れるプールの上流の方から見覚えのある浮き輪が漂って来たのだ。おかっぱ髪に濃紺のスク水。間違いない。

 浮き輪はちょうどプールの真ん中で流れが速い箇所に位置していたことで、見る見る俺の方へと迫って来る。

 すると浮き輪に乗っている人物が、ハッとした顔になり急いで方角を変えようとしているのが見えたのだが、水の中で自由が効かないことで、それは無駄な行為となり、俺の目の前に到着してしまったのだ。




「……はう。痛いですっ」




 そう。やって来たのは恵ちゃんだった。

 なので俺は漂着した恵ちゃんの脳天に手刀を落としたのであった。




「澤井さんが変になったのは、お前の仕業だろう」




 そう発言した俺に対して恵ちゃんは涙目になって頭を押さえている。




「……ううっ。バレちゃいましたっ。……はい。私ですっ」




「なぜ、いつもいつも女の子たちに変な神力を使うんだ?」




 すると恵ちゃんは浮き輪で浮かんだまま、そのささやか過ぎる胸を張りドヤ顔になる。




「決まってるじゃないですかっ。私は子宝の神ですよっ。大吉さんに子沢山になって欲しいからですっ




 完全に開き直っているな。

 まあ、これで事態はなんとかなったはずだ。俺は未だ俺に密着している澤井さんを見る。すると澤井さんはキョトンとした表情だった。おそらくたぶん自分になにが起こったのか、そして自分がなにをしているのかがわからなくて膠着してしまっているのだろう。

 だがそれも束の間だった。




「……きゃあ~! か、加茂くん、どうして……。それに私もどうして……」




 澤井さんが俺を突き飛ばすかのように両手で押しのけて一歩飛び退く。そして真っ赤になって周囲を見回す。

 おそらくたぶん知り合いの誰かに見られてないか確認したのだろう。そして今までの経緯から神力で操られたときの記憶は一切ないはずだ。だから自分から俺に抱きついてきたことや胸を押し付けてきたこと、そしてキスをねだったことも憶えてないだろう。

 まあ、それだけは幸いだな。




「俺にもよくわからん。お互いにお互いのことを気づいていなくて振り返ったら偶然ぶつかって抱き合う形になってしまったんじゃないか」




 俺は適当な言い訳をしてみた。

 だが、それは適度に説得力があったようで澤井さんは納得顔になるのであった。


やばかったのです。(`・ω・´)∩


 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中


「生忌物倶楽部」連載中



「夢見るように夢見たい」完結済み


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。


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