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405/512

405話 澤井遙香さんの誘惑なのです。

基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

「おい、待て!」




 ……さてはお前の神力だな。

 そう思った俺は手を伸ばして恵ちゃんを捕まえようとした。だが、水の流れに乗っている恵ちゃんを浮かせている浮き輪はするりと俺の手をすり抜けてしまった。そしてどんどん先へと流れて行く。

 俺は追いかけようとしたのだが、背中に密着している澤井さんがいるので身体の自由が効かない。

 なので、恵ちゃんを捕らえることはできなくなってしまったのだ。




「……ねえ、加茂くんの背中って素敵ね。背骨があって肩甲骨があって、背筋があって。……全部揃っているなんて。……はぁ、なんど見ても素敵だわ。ため息出ちゃう」




 澤井さんが意味のわからん言葉を放つ。

 誰の背中だって造りはみんな同じだろうが。それに俺は鍛えていないから筋肉はあまりないぞ。



 そう思ったのだが、同時に確信を持った。

 これは間違いなく恵ちゃんの神力だ。以前、……入学したばかりのときの保健室でも澤井さんはこんな感じで訳のわからんことに魅力を感じたと言っていたのを思い出したのだ。そしてそれの原因は恵ちゃんの神力だったのだ。なので今回の澤井さんの不可思議な行動もそうに間違いない。




「……ちょ、ちょっと、澤井さん、落ち着こうよ。いったん離れてよ。このままじゃ目立って仕方ないよ」




 俺は必死にそう提案する。

 そうなのだ。このままじゃ俺たちは注目の的だ。恥ずかしいし誤解されたら大変なのだ。



 ……だが、違った。

 プールのあちこちで中で抱き合っている高校生くらいの若い男女の姿があったのだ。背後から抱きついているだけじゃなく、遠慮なく正面から抱き合っているのもいる。なので特段俺と澤井さんだけが目立っている訳ではなかった。




「平気よ。だって周りにもいっぱいいるわ」




「いや、……だってあれはみんな恋人同士だろ? 俺たちは違うじゃないか」




「私はそのつもりよ」




 澤井さんは爆弾発言をした。……いや、これはきっと澤井さんの本心じゃない。恵ちゃんの神力でそう言わされているだけだ。きっと。




「ふうん。じゃあ、こうしましょ」




 俺の煮えきらない態度に不満を感じたのか、澤井さんは俺を抱いていた両手を離した。俺は瞬間、安堵するが、事態はそうじゃなかったのだ。

 するりと俺の前に回った澤井さんが俺を正面から抱きしめてきたのだ。俺の背に両手を回して全身で俺に抱きついている。そして澤井さんの髪の毛が俺の鼻にくっついて得も言われぬ良い香りが鼻孔をくすぐる。フローラルなシャンプーの香りだ。

 そしてささやかだが形良い双丘が俺の鳩尾辺りに接触した。

 うわっ……。すげえ柔らけえ。……もう頭がどうにかなってしまいそうになった。




 それから俺たちはそのままの姿勢でプールの中で立ったままだった。俺はどうにかこの事態を回避しようと考えたのだが、なぜか身体が動かない。

 俺にまで神力がかかってしまったのか、それとも澤井さんに魅了されたからなのだろうか……。




「あれ、加茂くん、……あはは。隅に置けないわね」




 そう言って俺の横を通過したのはビーチボールを抱えて水流に浮遊する呂姫ちゃんだった。その顔を見るとニヤニヤ笑いだ。




「……ち、違うんだ。これは……」




「まあまあ、事情はわかってるわよ。せいぜいその状況を楽しむのね」




「わかってるなら、助けてくれ」




「嫌よ。だって助けない方が面白いじゃない」




 なんてことだ。

 呂姫ちゃんはこれが恵ちゃんの神力が原因と100パーセントわかっているのだ。なのに助けようとはしてくれない。

 ……くそ! さすがは邪神だな。




 俺は悪態をつこうとしたのだが、呂姫ちゃんはみるみる遠ざかってしまうのであった。

 ……うん? 待てよ。

 そこで俺は気がついた。そうなのだ。ここは流れるプールなのだ。なのでプールに入っている人たちは何度も何度も周回するのである。

 だとすると……。俺は上流の方に目を配る。

 そんなときだった。




「ねえ、しましょ?」




 見ると澤井さんが顎を上げ俺を見つめていた。その整った顔はとても美しい。美少女ランキング学年1位を争うと評価されているのは伊達じゃない。

 そして俺を見つめた澤井さんは微笑をたたえると、そっと目を閉じて唇を俺に近づけるのであった。

澤井さんに魅了されそうなのです。(`・ω・´)∩


 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中


「生忌物倶楽部」連載中



「夢見るように夢見たい」完結済み


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。

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