400話 なんと元の世界へ無事に戻れるのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
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今の魔法はなんだ? これはゲーム終盤になってやっと取得できるような広範囲殲滅魔法なんじゃないだろうか……?
またしても俺が参戦できない味気ない戦闘になったにも関わらず、俺はメグミの魔法の威力に慄くのであった。
やがてボアたちの死骸は光の粒に変化して消えていく。まんまゲームだな。
「なあ、メグミ。今の魔法はなんだ? って言うか、いつの間にそんな強力な魔法を覚えたんだ?」
「今の魔法も神力ですっ。元々覚えているものですっ。ただ元の現実世界では使う必要がないので使っていなかっただけですっ」
……なんてことだ。
メグミ、いや、恵ちゃんは、こんな殺傷能力が高い神力が使えたんだな。ま、確かに元の世界では使うことはない。いや、使えないしな。ここは正直に納得することにしよう。
そして俺たちは地面に落ちていたジャイアント・ボアの対価とも言える落ちていた銀貨を拾うのであった。
その後、また山道を登り始める。
道の風景はなんの代わり映えもしないもので両側に背の高い岸壁が聳えるだけだ。そして道は左右にうねってゆっくりと登っている。
そんなときだった。
登道を曲がり切った後、道の左脇に青白く光る半透明の金属らしき柱があったのだ。柱は六角形で地面からまっすぐに伸びていて、腰ほどの高さだ。
俺の予想が間違っていなければ……。
「ダイキチ。あれはなんですかっ?」
「あれは多分セーブポイントだ」
「セーブポイント? なんです、それ?」
俺はゲームにおけるセーブポイントをメグミに説明する。セーブポイントとは今までプレイしていた状態を保存できるもので、その後失敗してもここに戻れるだけじゃなく、安全にゲームを終了できるシステムであることだ。
「……じゃ、じゃあ、元の世界に帰れるんでしょうかっ?」
「わからん。……まあ、試してみるか」
俺はセーブポイントの金属柱に触れた。すると”セーブしますか?”との表示が頭の中に現れた。なので俺はそれを選ぶ。
すると今度は”ゲームを続けますか?”と表示され、イエスとノーで選べるようになっていたのだ。
「……どうやらゲームを終了することができそうだぞ」
「良かったですっ。じゃあ、終了して元の世界に戻りましょうっ」
「ああ、わかった」
俺はノーを選択した。すると目の前の風景が真っ白に染まり、意識が遠のくのがわかった。
■
気がつくと、俺とメグミ、……いや、恵ちゃんは自室へと戻っていた。俺の目の前にはプレイ画面のままのスピリット・クエストがゲーミングPCに表示されている。
そしてその表示は山道の途中で見つけたセーブポイントだった。
「どうやら無事に戻って来られたみたいですねっ」
「ああ。そうみたいだな。……そして画面はさっき俺たちがいたセーブポイントになっているぞ」
「……ホントですねっ。じゃあ、実際に私たちはプレイしていたことになりますねっ」
そうなのだ。
まるで俺たちはこの画面の中に入ってプレイしていた。……そう考えるのが当然に思えてきた。
そして背後の机を見る。すると驚いたことに卵が鎮座していた。罅もなく、何事もなかったかのように存在感を放っていたのであった。
「……驚きましたっ。いつの間にか卵は元のままに戻ってますねっ」
「ああ。そうだな。……いよいよ不思議な卵だ」
「でも、私たちがゲーム世界に入ったのは、卵が光って割れたからですよねっ」
そうだった。
卵が光って割れて、光の奔流が部屋を満たして、俺たちは気がついたらスピクエの世界にいたのだ。
やはり、卵とゲーム世界にはなんらかの関連性があるんだろうな……。
セーブポイントが存在したのです。(`・ω・´)∩
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私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。