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397話 スピリット・クエストの世界なのです。

基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。

どうぞよろしくお願いいたします。


 

「……お前たち、本気で言ってるのか? ……まあ、ええ。……精霊メロロロン様はこの世界をお創りになられた偉大な精霊様だ。……お前たち、これから儀式を行うのに大丈夫なのかのう」




 俺たちに呆れながらも長老は説明してくれた。

 遥かなる太古。この地にはなにもなかった。そしてそれを憐れんだメロロロン様が海を創り、そして大地を生み出されたとのことだ。そこで人々は安息に暮らせる地を手に入れたのだ。

 だが、やがて邪悪な魔王が異界から現れて世界に魔物を解き放ったとのことだ。それ以来人々は魔物に怯える暮らしを余儀なくされてしまった……。

 長老はまるで詩を朗々と謳い上げるかのように話してくれるのであった。




 そこまで聞いた俺は、うむむ、と唸ってしまう。

 これでこの世界がどこなのかわかってしまったからだ。そしてそのことで集落の家屋に見覚えがあることも理解した。

 なので今だ酔いしれるように説明を続ける長老に聞こえぬように小声で話すのであった。



(……恵ちゃん。この世界がわかった。ここはスピリット・クエストの世界だ)


(えっ……。あのパソコンのゲームの世界なんですかっ?)




 俺は大きく頷く。

 そうなのだ。精霊が大地を創り、魔王が魔物を支配する世界。それこそがスピクエの世界観なのだ。




(……どういう理由、いや、理屈かわからんが、俺たちはスピクエの世界に入ってしまったようだ)


(……なんとも不思議ですっ。――あっ! もしかしたら、あの卵が原因かもしれませんっ!)




 なるほど。

 あの卵は結局、混入犯も意図も効果もわからなかった。だが、ゲーミングPCの箱に入っていたことから、PCに関係するものであると考えるのに無理はない。

 そしてゲーム世界へと転移させるアイテムだったと思えば、理解はできる。

 まして犯人は神力を行使できる存在の可能性が高いのだ。だとすれば俺たちをゲーム世界へと誘うことも不可能ではないはず……。




(そうだな。あの卵が光って孵化してときに俺はスピクエをプレイしていた。もしかしたらこの世界に来たのはそれかもな)


(それ、あり得ますっ。……それにしても長老さんの話、長いですねっ)




 そうなのだ。

 長老の話はまだ続いていた。知り得た知識を若者に伝えることを喜んでいるのかもしれない。




「――そして今日だ。お前たちは16歳の成人の日を迎えた。この村で今日、成人となったのはお前たち2人だけだ。なので2人だけで山の上の祠に向かい、精霊様に成人したことを報告するのじゃ」




 どうやらRPG定番のはじまりの村のイベント開始のようだ。

 俺は長老が指差す岩だらけの小高い山の頂上を見上げる。なるほど。ここからだと小さくしか見えないが確かに石造りの祠がポツンと見える。




「メグミは女の子じゃ。なのでダイキチが守ってやるのじゃぞ」




 なるほど。そういう意味で俺が剣を持っているのか。……だが俺は剣なんて使ったことないぞ。




(大丈夫ですっ。大吉さんは私が守りますからっ)




 なんとも頼りになる恵ちゃんの言葉だった。

 そして話を終えた長老がはじまりの村へと去って行く。そして俺と恵ちゃんだけが残された。ゲーム的に言えばダイキチとメグミだな。




「なあ、これから俺のことはダイキチと呼んでくれないか? 俺はお前のことをメグミと呼ぶから。それの方がゲームっぽくていい感じなんだ。PRGゲームってのは登場人物になりきるのがお約束だからな」




「わかりましたっ。じゃあ、これからは大吉さんじゃなくて、ダイキチって呼びますねっ」




 そして俺たちはこれから登る山道の前で確認をすることになった。それは装備のことだ。こういうRPGゲームでは、武器や防具に名称やそれぞれが持つ効果などが数値化されているからだ。

 それを確かめようとしたのだが、俺はそこで早速躓くことになる。

 現実世界のゲームと違ってコントローラーとかキーボードとかがないのでメニュー画面の呼び出し方法がわからないのだ。

 俺はその困っている点をメグミに伝えた。メグミはゲームをプレイした経験が少ない。ましてRPGゲームは未体験なのだ。




「……なるほどですっ。武器や防具など身につけるものに強弱があるんですねっ。で、それを調べる方法がわからないのですかっ?」




「そうなんだ。例えば新しい武器を手に入れても、それを使える者は誰なのか、また、今装備している武器よりも強いのかどうかがわからなくては旅は続けられない」




「それは困りましたっ。……じゃあ触ってみたらどうですかっ?」




 ……触る? 触ってどうすんだ?

 俺は戸惑う。だが、そんな俺のことなんて構わずにメグミはまず地面に置きっぱなしになっている鞘に入った剣を手に取ったのだ。




「……これは”旅人の剣”というものですねっ。強さは最弱とありますっ」




「なんだって?」




 俺は手を伸ばしメグミから”旅人の剣”を受け取った。すると頭の中に情報が浮かび上がる。



 ――名称:旅人の剣。装備できる者:ダイキチ。強さ:店売りの物では最弱――




 なるほど。確かに触れるだけでこの剣の特徴がわかる。

 それから俺は自分が着ている服やズボン、靴なども手で触れてみる。するとその情報がわかった。そして予想通り冒険の最初に手に入る最弱の装備であることもわかったのだ。




「……まあ、欲しかった情報の得方はわかった。……じゃあ、山頂の祠まで行くか」




「そうですねっ。お約束ならば仕方ありませんっ」




 こうして俺はメグミと山道を登り始めるのであった。


ゲーム世界に入ってしまったのです。(`・ω・´)∩


 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中


「生忌物倶楽部」連載中



「夢見るように夢見たい」完結済み


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。


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