394話 FPSは激ムズなのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
オープニングが終わった。そして画面には新規プレイの表示が出ている。俺は実はFPSはほとんどやったことがない。ネット動画で見たことの方が多いくらいだ。
「……銃で戦うゲームですかっ? なんだか難しそうですっ」
「ああ。このゲームは難しい。一瞬の判断ですべて決まるんだ」
俺はFPSを恵ちゃんに簡単に説明した。画面は一人称視点でプレイとなる。そして敵と銃で撃ち合うゲームであること。そして敵を察知するには見るだけでなく銃声や足音などの音も重要であることだ。
「……お。そう言えば」
俺はPCの箱を持って来て開けた。中にはまだ未開封の付属品があったからだ。そして俺はゲーム用ヘッドセットを取り出す。これはまさにFPSのために使用されるよう考えられたヘッドセットで音質も良く、軽い。そして黒と赤を基調としたデザインがこのゲーミングPCに合ってカッコいいのだ。
俺は頭にヘッドセットを被りPCに接続する。う~ん。気分はプロゲーマーだな。いい感じだ。
……だが、そこで俺はふと気づく。そしてヘッドセットを外すのであった。
「どうしたんですかっ? せっかく着けたんじゃないですかっ?」
「ああ。……これをPCに接続すると外では音が聞こえなくなるんだ。つまり俺だけが聞こえて恵ちゃんには聞こえなくなってしまう」
「ああっ。なるほどですっ」
「なので今回はやや不利になるが、外部スピーカーに接続する」
俺はヘッドセットをPCから外し、代わりにスピーカーを繋ぐ。確かにヘッドホンよりも音の判別がしにくいが、それでも小さな内蔵スピーカーと比べると別物だ。
そしてプレイをする。
戦う場所は廃墟の街だった。住民は誰もいない崩れたコンクリートの建物が並ぶ殺風景な舞台だ。
すでに戦闘がバトルロイヤル状態で始まっていて、ただひとり勝ち残ったプレイヤーが優勝者になるのだ。
「……があ、やられた~」
俺は苦戦していた。……と、言うか全敗だ。今はオフラインでやっているので相手はすべてコンピュータが操作しているのだが、それでも相当強い。
俺は敵に命中弾をまったく与えることができず、死角から滅多打ちにされてしまうのだ。
「……やっぱり俺にはFPSは無理だな」
「思ったんですけど、このゲーム、秀子ちゃんなら勝てますよねっ?」
なるほど。
秀子ちゃんは遊戯の神様だ。なのできっとこんな難しいFPSゲームでもホイホイとクリアしてしまうんだろうな。
「そうだな。秀子ちゃんなら大丈夫だと思う。……って、そう言えば秀子ちゃんと臥留子ちゃんから連絡来ているか?」
思い出したのだ。
今朝、PCショップを出た後に公園で恵ちゃんが電話をしたら繋がらず、メールとSNSで送信したはずだったのだ。
「あっ。……そう言えばそうでしたっ。今、確認しますねっ」
恵ちゃんが自分のスマホをチェックする。メールの受信とSNSの書き込みを調べるだけなので、あっと言う間に終わる。そして首を左右に振るのであった。
「……駄目です。臥留子ちゃんからも秀子ちゃんからも、なにもありませんっ」
「ってことは、2人ともスマホを見てないな……」
「もしかすると2人とも持ち歩いてないかもしれませんっ……」
携帯電話の意味がねえ~……。
だが、臥留子ちゃんと秀子ちゃんのそれぞれの性格を考えるとそれもあり得る。コミュニケーションに飢えてない、って言うとも言えるし、情報にもあまり興味を示さない性格でもあるからだ。
そんなときだった。恵ちゃんが部屋の勉強机の上を突然に指さしたのだ。
「ああっ! 見てくださいっ! 卵がまた光っていますっ」
FPSは無理なのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。