385話 とうとう臥留子ちゃんが起きたのです。
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「うぷっ。……なんか気持ち悪いな」
「そうですねっ。空間が消滅しているんで、その影響が人体に出ているんだと思いますっ」
なるほど。
よくわかるようなわからないような説明だったが俺の身体に異常が発生しているのはわかった。それで気持ち悪いのだろう。
見ると恵ちゃんたちは平気な顔だった。この不快な感じは人間の俺だけで、女神たちには影響がないのだろう。
やがて周囲には光が溢れ、俺の視界は真っ白に塗りつぶされ、意識もなんだか希薄になっていくのであった。
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「……きちさん……い吉さん……大吉さん……起きてくださいっ」
身体を揺すぶられながら俺の意識はだんだんと覚醒していく。目を開けるとそこには恵ちゃんの姿があった。
どうやら意識のない俺を起こしてくれたようだ。
「……ここはどこだ?」
横たわっていた俺は上半身を起こす。そして辺りを見回す。……見覚えのある風景だな。
「ここは臥留子ちゃんの屋敷ですっ」
ああ。確かにそうだ。
ここは臥留子ちゃんの豪農屋敷だ。その縁側に俺は寝かされていたようだ。目の前の庭には植木と鶏が見える。
「……あいつは誰だ?」
俺は縁側のずっと離れた場所でしょんぼりと座っている男を見る。長い黒髪で痩せた男だ。俯いているので顔は見えない。
「あれは眠京太郎さんですっ」
「えっ? ずいぶんと痩せたな……」
「あれが本来の姿なのですっ」
なるほど。
臥留子ちゃんの創造世界に乗っかる形で創った自分の理想郷世界では相当、暴飲暴食をしていたからな。
本来痩せ型だった体形があんなに肥えたってところだろうか。
「――連れてきたわよ」
その声に振り返ると畳の間から呂姫ちゃんと集子ちゃんと秀子ちゃんに連れられて、まだぼーっとした表情の臥留子ちゃんがやって来た。
まだ眠いようで足取りがおぼつかない様子だ。
「……影響……残ってる……まだ……眠い……」
寝間着の浴衣姿でとぼとぼと呂姫ちゃんに手を引かれて臥留子ちゃんがそう呟いた。
どうやらまだ眠京太郎の神力である眠りの術が残っているようだ。
「反省してます~。もうしません~」
縁側の向こうでしょぼくれている眠京太郎がそう呟く。
そう言えばだが、恵ちゃんたちはちゃんと約束を守ったようだな。女体化はなくなって男に戻っているしな。
それから縁側に全員腰掛けて、これまでの経緯を確認することになった。
臥留子ちゃんは最初は、ぼーっとした感じだったが、やがてすっかり意識が戻った。まあ、それでもいつものボソボソ喋りのままだったが……。
そして俺たちが予想した通りの経緯であることがわかった。
ゲーセン辺りまでは起きて待っていたが、臥留子ちゃん曰く俺たちの移動が遅いことでだんだんと退屈で眠くなってしまったとのことだ。
そしてふいに眠京太郎が訪ねてきたのだが、もうその頃には眠気が相当強かったとのことではっきりと憶えていないらしい。
まあ、そこで眠京太郎が自分の世界を便乗して創れることに気がついて、臥留子ちゃんを神力で深い眠りに落としてしまった。
このことは眠京太郎も白状したので、まあだいたい俺たちの予想は当たっていたのであった。
臥留子ちゃん、やっと起きたのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。