373話 狭い通路で四つん這いなのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
「……なにか薄っぺらいもの。……あ、そうだ」
俺はポケットから財布を取り出した。そして小銭を調べると1円玉があった。俺は1円玉を掴むと扉のわずかに広くなっている溝に差し込んだ。そして梃子の原理で奥へと力を入れると扉が静かに開かれるのであった。
「開いたな。良かった」
「大吉さんっ。流石ですっ」
恵ちゃんが小躍りしながら満面の笑みを浮かべる。
「さあ、入りましょう。……って、狭いわね」
「ふぉふぉふぉ。立ったままじゃ無理じゃのう」
「四つん這い」
そうなのだ。
扉の先はまっすぐな通路になっていたのだが、天井があまりにも低かったのだ。
まあ、扉の高さが1メートルくらいしかないことから予想はしていたのだが、通路はもっと低かったのだ。
ちなみにこの高さから考えるに猫は立ったまま走り去っただろう。追いつくのが大変だ。
「猫の姿はすっかり見えないな」
「仕方ありませんっ。扉を開けるのに時間がかかってしまいましたしっ」
「それに私たちは四つん這いだから遅いのよね」
「ふぉふぉふぉ。じゃが一本道じゃ」
「絶対に捕まえる」
そうなのだ。
この通路の両側はすべて板壁になっていて、天井と床も板で造られている。そして脇道はなく、ひたすら真っすぐに続いているのだ。今は距離を離されてもきっと追いつけるだろう。
ちなみに通路は真っ暗ではない。天井の板の隙間から明かりが漏れていて通路全体を照らしているからだ。これがなんの明かりかはわからないが、神力であることは間違いないだろう。
そして俺を先頭に恵ちゃん、呂姫ちゃん、集子ちゃん、秀子ちゃんの順で一列になって四つん這いで通路を進む。
この順番に大きな意味はない。だがスカート姿の女神たちがいることから俺がその後ろを進むのはセクハラ的に問題があるので俺が先頭になっただけだ。
こうしてしばらく進んだときだった。俺は疲労を感じたので提案してみるのだった。
「なあ、ちょっと休憩しないか?」
「さ、賛成ですっ」
「この体勢って疲れるわね」
「ふぉふぉふぉ。キツかったのでちょうど良いのじゃ」
「感謝」
そうなのだ。
四つん這いで進むのはとても身体に負担がかかる。両腕と両膝で身体を動かすのだから徒歩と違って腕は疲れるし、膝は痛いしさんざんだ。
なので俺たちは壁にもたれて座って休憩を取ることにしたのだ。
しかしこの通路どれくらい続くのだろうか?
もう10分は四つん這いで進んだはずだ。それでこの疲労なのだ。なのでこれがまだ延々と続くのであれば俺たちは猫の追跡を諦めなければならないかもしれない。
「まだ出口は見えないな」
「希望的観測ですが、先は短いと思いますっ」
「そうね。そう思って頑張りましょう」
そして休憩を終えた俺たちは再び四つん這いになって進むのであった。だが恵ちゃんの予想が当たっていたようで、ものの5分もしないで俺たちは狭い通路から出られたのだ。
そしてそこに広がる光景に誰もが口をあんぐりと開けて立ち尽くしてしまったのだった。
狭い通路にうんざりなのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。