370話 逃げる猫なのです。
今回はちょっと短いです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
「どうするか。……奥の開きっぱなしの襖の向こうを調べるか?」
「……判断に迷いますねっ」
「ちょっと調べるくらいなら大丈夫じゃないかしら?」
「ふぉふぉふぉ。深入りせんなら」
「少しなら」
俺たちはそう結論した。そして全員で開いている奥の襖の先を覗き込んだのだ。
「ああっ……! なにかいますよっ」
「逃げてるわね」
そうなのだ。
襖が次々と開かれて奥へ奥へと逃げるなにかがいるのだ。俺はそれをよく見ようと開け放たれていた襖に近づき奥を覗く。
すると見えた。
今、新たな襖を開けて更に奥へと逃げる者の姿が見えたのだ。
「……立ち上がった猫?」
「後ろ足だけで走る猫ですねっ。なにか抱えていますっ」
「四角い箱? 木製みたいね」
「ふぉふぉふぉ。あれは柱時計じゃのう」
「ボーンボーンと鳴ってる」
そうなのだ。
それはかなり特殊な三毛猫だった。二本足で黒を基調とした着物を着ており、大きな柱時計を抱えて逃走しているのだ。
俺はそのファンタジーな姿に記憶が刺激される。
そう。あれは昔見た子供向けのアニメ映画が思い出されたのだ。
「……不思議の国のアリスの兎を思い出したぞ」
「服を着ているのと時計を持って急いでいるところは同じですねっ」
そうなのだ。
ただし、アリスの兎は赤いジャケットに懐中時計だが、この猫は着物姿で柱時計の違いはあるんだが、急いで去っている部分は同じだ。
「私、なにかあの猫が今回のキーワードになっている気がするわ」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃのう。儂らから逃げていると言うことが気になるのう」
「同意。あれを捕獲」
俺は恵ちゃん、呂姫ちゃん、集子ちゃん、秀子ちゃんの顔を見る。すると全員が深く頷くのであった。
つまりはあれを追えってことだ。
「じゃあ、計画変更でいいな?」
「もちろんですっ。あの猫を見失わないうちに追いかけましょうっ」
「決まりね」
そして俺たちは一斉に走り出した。もちろん猫の逃げた方角だ。猫は襖を開けっ放しにして逃走しているので追うのは難しくない。
そして隣の部屋を通過し、また隣の部屋を通り過ぎて追跡を始めるのであった。
走って逃げる猫なのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。