364話 再び臥留子ちゃんの屋敷なのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
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「残るは恵ちゃんの世界か……」
「そうですねっ。私が創った中世ヨーロッパ風の城塞都市ですっ」
やがてそれは見えてきた。
視界が晴れてきて真下に壁で周囲を囲まれた石造りの街が見えてくる。中心に聳えるのは領主館。ここからだと尖塔の先に手が届きそうなほど近い。
「おっ、住民たちが見えるぞ」
「本当ですねっ。私たちには気づいていないみたいですっ」
そうなのだ。
街の中には馬車が走り、人々が歩いている様子がわかるのだ。いるのはもちろん全員が若い女性たちだ。
そして恵ちゃんの指摘通り、どうやら俺たちの姿は見えていないようだった。
そして街を越えた。
雲の道の高度はどんどん下がっていて、もう100メートルもない。このまま歩けば地上に着くのだろうか。
そうこう思っていると雲の道はまた濃霧に突入した。
「……あと、なにがあったっけ?」
「臥留子ちゃんの屋敷ですねっ」
「ああ、あの茅葺き屋根の豪農の家ってヤツね」
そうだった。
小さな苔むした祠から入って延々と歩いて到着した和風屋敷のことだ。あれは先程も上空から見たのだが、高さがあり過ぎてミニチュアみたいにしか見えなかった。
これからそれが見えるのだろう。そんなことを思っていたときだった。
周囲はまだ霧が濃く視界はほとんどない状態のときだ。
「……あれっ? なんか道が変じゃないですかっ?」
「本当ね。ここ地面よ」
「ふぉふぉふぉ。いつのまにか雲の道が終わっていんたんじゃのう」
「ここ地上」
そうなのだ。
雲の回廊はどんどん高度を下げた結果、とうとう地面に到着していたのだ。屈んで触ってみると間違いなく土の地面だった。
やがて霧がすっかり晴れた。強い風が吹いたかと思うと、さあっと視界が一気に広がったのだ。
「ああっ、あれっ、臥留子ちゃんの屋敷ですよっ」
「ホントね。茅葺きの平屋だし間違いないわ」
そうだった。
眼の前に建っているのは古民家風の大きな和風屋敷だったのだ。
雲の回廊から見下ろしたときは、たぶんそうだろうなとしかわからない高度だったのだが、今は地面にしっかりとある。なので間違いようがない。
庭には鶏が放し飼いされているし、縁側の上では猫たちがくつろいでいる。俺たちが最初に来たときとまったく同じ風景だった。
「……ここに来たってことは、どういう意図があるんだろうな?」
「……はっ! ま、まさかまたまったく同じことをさせようって魂胆でしょうかっ。襖を開けさせたりっ、蔵の階段を延々と登らされたり、ゲーセンで魔物と戦わせたりっ……」
「臥留子はそこまで底意地が悪いとは思えないけど。……でもあり得るかも。臥留子だもんね」
俺と恵ちゃんと呂姫ちゃんはそう話し合う。集子ちゃんと秀子ちゃんはこの風景には見覚えがないとのことで物珍しげに見回している。
そう言えば2人とも臥留子ちゃんに呼ばれたことは覚えていたが、集子ちゃんは目を覚ましたのは蔵の長持の中、秀子ちゃんはゲーセンだったと言っていたし、この屋敷のことはまったく憶えてないんだろうな。
また臥留子ちゃんの屋敷に戻ったのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。