363話 世界を逆戻りなのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
「地上に向かっているのか?」
「そうですねっ。しかも見ると大きくUターンしている感じですねっ」
「そうね。回れ右ってことかしら」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃのう。なにやら引き返す感じじゃのう」
「理解不能」
俺たちは道を進むしかない。だから大きく右に回りながら降る道を歩き続ける。高度がどんどん落ちてきて雲海の中に突入した。
当然、視界は真っ白でほとんど見えない。
「気を付けてくださいっ。互いを見失いしないようにしてくださいっ」
「そうね。それと足元もよ。道から落ちたら一大事よ」
恵ちゃんと呂姫ちゃんの注意掛けに俺たちは頷いた。そして互いのシルエットを見守るようにして足元の道も踏み外さないように注意しながらしばらく歩き続けるのであった。
「ああっ! なにか見えますよっ」
「……温泉旅館ね。あれは私が創ったものよ」
そうなのだ。
雲海の霧が歩いているうちに徐々に薄くなっていき、視界がだんだん戻ってきたのだ。
そして眼下には呂姫ちゃんが創った温泉郷が見えてきた。
先ほどよりも高度が下がったので近くなったことから大きく見える。相変わらず城のような造りだ。
俺たちはその黒光りする瓦屋根を見下ろしながら歩き続けるのであった。
その後は俺たちはまた霧の中に包まれた。上下左右真っ白でかろうじて互いのシルエットと足元の雲の道が見えるだけだ。
「……順番からすると儂の創った世界が見えてくるのかのう?」
霧がまた薄くなり始め、視界が戻りかけたとき集子ちゃんがそう口にした。
すると眼下の霧がさあっと晴れて大海原が見えた。そして山を中心とした島があるのがわかる。
あれは確かに集子ちゃんの世界の宝島だ。
「間違いないようだな。あれは若杉先生が案内人をしていた島だな」
先ほど見たときよりも高度が落ちてきているので島はくっきりと見える。山頂の東西南北の洞窟の入口もわかるくらいだ。
そして島の上空を通り過ぎたことで宝島は背後に去る。するとまた雲海に突入し、視界が悪くなった。
「次は神武商店街」
秀子ちゃんがそうぽつりと呟いた。確かに順番からすると次は秀子ちゃんが創った世界ってことになる。
「……しかし、臥留子ちゃんはなにを考えているんでしょうかっ? わざわざ一通り見せてからUターンさせるなんて理解できませんっ」
「確かにそうね。でも、はっきりしていることがひとつだけあるわ」
「高さだな。行きに通ったときよりも高度がどんどん落ちている」
俺は呂姫ちゃんの言葉の回答を述べた。そうなのだ。行きはずいぶんと高い位置から全体を見せるようにしていて、帰りは高さがどんどん低くなっている。なのではっきりと見ることができるのだ。
「ふぉふぉふぉ。確かに道はどんどん降っているのう」
そしてそれを証明するように視界が開けてきた。眼下には神武高校と神武商店街が見えてきたのだ。
地上からの高さはもう150メートルもないだろう。
校舎の屋上も商店街のアーケードの屋根もはっきりと見える。
やがて俺たちは神武商店街の頭上を通り抜けた。
するとまた雲海の中に突入だ。視界が一気に悪くなり女神たちの姿も影としてしか判別できない。
ただ雲の道はしっかり続いているので進むしか選択肢はない。
順番に遡っているのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。