358話 温泉があったのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
「でも、あの硫黄泉のお風呂はホントに気持ちよかったですっ」
「そうね。あれは私の会心の作よ」
「快適最良」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃのう。もう一度入りたかったのう」
女神たちがそんな会話をしている。確かに俺ももう一度入りたいと思う。
俺は視線を眼下から目の前へと移す。すると左右にくねりながら伸びているこの雲の道の先になにかがあるのが見えたのだ。
「おい、道の上になにかあるぞ」
「ホントですねっ。小屋ですか……っ?」
そうなのだ。
まだ遥か前方なのだが、この道の先でそれほど大きくない建造物が見えるのだ。
造りはたぶん木造。平屋で奥行きはあまりない。
「休憩所みたいなものかしら?」
「ふぉふぉふぉ。ならええのう。ちょうど休みたいとこじゃったわい」
「歓迎」
俺たちはそしてその建物目指して歩き続けた。そして10分もすると到着することができた。木造平屋のその建物は正面に扉が2つあり、青いのれんと赤いのれんに分かれていた。まあ、どう見ても風呂だ。そしていつの間にか硫黄の匂いまで漂っている。
「温泉だな。硫黄泉にもう一度入りたいって俺たちが言ったからか?」
「かもしれませんっ。臥留子ちゃんのサービスでしょうかっ」
「結構歩いたから、ここで温泉は嬉しいわ」
「ふぉふぉふぉ。ええのう」
「風呂は嬉しい」
なので俺たちは温泉に入ることにした。
俺だけが男なので男湯の青いのれんの扉を開ける。するとそこは脱衣場だった。
棚に脱衣籠が並べられている田舎の温泉場そのものの造りだ。そして脇を見るとガラス瓶のコーヒー牛乳が陳列されているガラス戸の冷蔵庫が見えた。嬉しいことに料金無料と書かれている。
男湯の脱衣場と女湯の脱衣場は板壁一枚隔てただけのようで、女湯の方からわいわいと賑やかな声が聞こえてくる。
どうやら女神たちが服を脱いでいるのだろう。
別に競争している訳ではないのだが、脱ぐ服が少ない俺はどの女神たちよりも先に裸になったので、さっさと露天風呂に通じる扉を開けるのであった。
……で、俺はそこで固まってしまった。
そこには洗い場があり、その向こうには岩や大きな石で囲まれた露天風呂があるのだが、その広さがおかしいのだ。
これはどうみても男湯と女湯に分かれていない。つまり入口は2つあるが風呂は1つだけの混浴だったのだ。
「おいっ、ちょっと待て! 風呂場は混浴だぞっ!」
俺はあらん限りの大声で叫んだ。するとそれまでわいわいと賑やかだった女湯の脱衣場がいきなり静まった。
そして声がする。
「混浴って言いましたっ? お風呂がひとつしかないんですかっ?」
俺は改めて岩風呂を見る。仕切りもなくて白濁した硫黄泉の大きな風呂があるだけだ。
間違いなくこれは混浴だ。
「ああ、風呂はひとつしかない。広めではあるので人数的に問題はないが、男女の仕切りがないんだ」
「困りましたっ……」
「そうね。加茂くんといっしょはハズいわね」
「ふぉふぉふぉ。気まずいのう」
「白昼堂々混浴。忌避」
そうだろうな。
俺は4女神たちの全裸を見たことがある。だがあれは事故だ。改まって裸を見せ合うのは抵抗があるだろうし、第一、俺が困る。理性を保てるかわからんからだ。
中は分かれていなかったのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。