357話 次々と再現されるのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
神武高校や商店街を通り過ぎた。するとまたしばらく眼下の景色は雲海で見えなくなる。そして俺たちはなだらかに左右にうねる雲の道を歩き続けるのであった。
「あ、なにか見えてきましたよっ」
恵ちゃんが道の下を指さした。すると確かになにかが見える。雲海がだんだん薄くなり始めていて視界がしっかりしてきた。
すると風景が明らかになった。
「……海だな」
そうなのだ。このどこまでも長細い雲の道の真下は大海原だったのだ。水平線まで見えるその海には島のひとつも船のひとつも見当たらない。
「むう。集子の世界」
そうである。
俺たちは秀子ちゃんの創った神武商店街から去った後、集子ちゃんが創った世界へと移動した。
そしてその際には集子ちゃんが船長を務める海賊船(?)の甲板の上だったはずだ。
なのにその船の姿形もない。
「まあ、幸い雲の道は続いているから、あんま気にしなくてもいいんじゃないか」
「そうですねっ。とりあえず問題はありませんっ」
そんなときだった。俺の横を歩いている集子ちゃんがふいに足を止めたのだ。
「ふぉふぉふぉ。島が見えてきたのう」
「うおっ! ホントだ」
「中央が山になってますっ。……あれはひょっとしてっ」
「宝島」
そうなのだ。
あれは俺たちが上陸して宝探しをした島だ。管理人として若杉先生がいた場所だった。
宝探しをしたときは海に面した洞窟から上陸して島の森を超えて山を登った。そのときの印象ではあまり広い島とは思わなかったが、こうして上から見ると山を中央に抱き、その麓に広い森が覆っていたのがわかる。
「上から見ると印象が違うな」
「そうですねっ。もっと小さい島だと思ってましたっ」
どうやら恵ちゃんも俺と同じ感想だったようだ。
そして俺たちは雲の道をどんどん歩く。すると眼下はまた雲海に覆われてしまい海も島もまったく見えなくなってしまった。
「こうなると次に見えるのが予想できるな」
「そうですねっ。呂姫ちゃんが創った世界ですねっ」
「順番からするとそうなるわね」
「ふぉふぉふぉ。温泉が気持ちよかったのう」
そうなのだ。
ゲーセンを出た後バラバラになってしまって、最後に合流したのが呂姫ちゃんだった。そしてその呂姫ちゃんが創り上げた異空間は温泉郷だったのだ。
ちなみにだが平凡の凡である新井がいた場所でもある。新井は若杉先生同様にその場から移動しなかったのだ。呂姫ちゃんの世界と同じく呂姫ちゃんが創った存在なのでその場から移動ができないようだったのだ。
やがて雲が薄くなり眼下の世界が見えてくる。
それは間違いなく和風の温泉郷だった。長い一本道の両側に土産物屋や食堂が立ち並び、奥には宿屋街が見えている。
「あのいちばん奥の大きな建物が私たちが行った旅館ですねっ」
恵ちゃんの言葉通りに大きな城のような旅館が見えた。あの旅館に今俺たちが歩いている雲の回廊に通じる扉があったのだ。
だとするとこの回廊との位置関係に疑問が生じるが、まあ、そこは不思議空間なので深く考えるのはよそう。
今まで通った世界が再現されているのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。