355話 雲の回廊なのです。
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「その鍵の中に正解はあるんですかねっ」
「さあ……。でも支配人室にある鍵ってそれだけよ」
「むう。なければ困る」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃのう。まあ、とにかく鍵さえ合えばいいんじゃからのう」
そんな会話を聞きながら俺は解錠を続けた。だが10本以上試しても合致する鍵がない。
残り半分くらいの状態になっていた。
「……まだこれだけ残っているんだ。1本くらい合うのがあるだろう」
「そうですねっ。最後まで諦めないでくださいっ」
そう恵ちゃんが応援してくれるのだが、合う鍵がなかなかない。そして最後の1本になったときだった。
「いよいよ、これで最後ね」
「むう。可能性は低い」
「ふぉふぉふぉ。これで開けられなければ打つ手なしじゃのう」
そう、呂姫ちゃん、秀子ちゃん、集子ちゃんが口にする。
俺は最後の1本に望みを賭けて鍵穴に差し込む。
――すると鍵が合った。
俺は鍵を左に回すとカチャリと音がして解錠されたのが手応えでわかる。
「……お、開いたぞ」
「や、やりましたっ! ついに臥留子ちゃんと対面できますっ」
思えば長かった。
忘れてはいない。元々、臥留子ちゃんに会いに行ったのはPCショップにゲーミングPCが届いたとの連絡があったのが理由だ。そしてPCを購入したのがダイキチーナの姿のときだったので、俺を女体化してもらうために臥留子ちゃんにお願いしたのだ。
それが延々と異世界を旅することになってしまうとは、まさか思わなかった。
だが、それもじきに終わる。この扉の先に臥留子ちゃんがいるからだ。
「扉を開けるぞ」
俺はそう宣言して後ろを振り返る。すると恵ちゃん、呂姫ちゃん、集子ちゃん、秀子ちゃんが頷くのが見えた。みんな思いは同じなのだ。
――カチャリ。
音をたてて扉は開かれた。だがそこに見えた風景に俺たちは唖然としてしまったのだ。
そこは空中だったのだ。
青い空が上だけじゃなくて下にも広がり、扉からは真っ白い雲が長細くずっと遠くまで道のように続いているのであった。
「まるで雲の空中回廊だな」
「そうですねっ。でもこれどうするんですかっ?」
「神子恵。あなたがいちばんチビなんだから、あなたが行きなさいよ」
「嫌ですよっ。落ちたらどうするんですかっ」
呂姫ちゃんが恵ちゃんに無茶を言う。確かに雲が通路のように遠くまで伸びているが、雲は雲なのだ。歩いて行ける訳がない。
……だが。
「むう。……なんか行けそう」
突然、秀子ちゃんがそう言うと足を一歩伸ばして雲を踏んだのだ。だが雲は秀子ちゃんの重みを受け止めていて、足を踏み抜く気配がない。
「大丈夫」
秀子ちゃんは確認を終えたようで、さっさと雲の回廊を歩き始めたのであった。
雲の道があったのです。(`・ω・´)∩
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私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。