352話 臥留子ちゃんの世界へ通じる扉なのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
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「……このフロアに臥留子の空間に戻れる扉を造ったのよ」
「ええっ! 臥留子ちゃんがいる空間がわかったのですかっ」
「ゲーセンでドラゴンと戦ったでしょ? あの後すぐに臥留子の創った空間が閉鎖されそうになっているのがわかったので、そこに扉を設置したの」
そして呂姫ちゃんはロビーの隅にあるなんの変哲もない扉を指さした。木製の扉で金属製のドアノブが付いている。
あれが臥留子ちゃんの世界へ通じるドアなんだろう。
「呂姫。ナイス」
「ふぉふぉふぉ。それは頼もしいのう」
秀子ちゃんも集子ちゃんも感心したかのような笑顔を見せる。
だが、呂姫ちゃんは左右に首を振る。
「でもその扉、開かないのよ。鍵が掛かっている訳じゃないんだけど、なんかくっついてる? 接着されてしまっているような感じなのよね」
「臥留子ちゃんが妨害しているってことですかっ?」
「……妨害ってより、こっちの意図に気づいていないって感じ?」
呂姫ちゃんの説明によると、ドアを叩いて呼びかけても返事が一切ないようなのだ。ドアの向こうにいればノックの音やこちらの声も届くとのことなので、ドアの向こうにいないか、意識を失っているんじゃないかと呂姫ちゃんは言う。
「……試してみます。臥留子ちゃん返事してくださいっ」
ドアをドンドンと叩きながら恵ちゃんが叫ぶ。だがやはり反応がない。恵ちゃんはしばらくそれを繰り返していたが、やがて首を左右に降り、あきらめるのであった。
「……ふぉふぉふぉ。おかしいのう。だが気配は感じるのう」
集子ちゃんが突然にそんなことを言う。
説明を聞くと集子ちゃんは気配には敏感でこの扉の向こうに明らかに臥留子ちゃんがいるのがわかるそうだ。
「居留守?」
「それはないと思いますよっ。臥留子ちゃんの創造空間が消滅してから200年経ちますっ。その間ずっと居留守を使う必然性がありませんっ」
確かにそうだ。
例えば……。そう、なにか俺たちに対して機嫌が悪くなったとする。だとしてもその不機嫌が200年経っても治らないとは長すぎる。これはなにか別の原因が生じた可能性の方が高い。
「……仕方ないから。温泉でも入る? ここって温泉郷だから暇をつぶすのには温泉くらいしかないのよね」
呂姫ちゃんがそう提案してくる。
温泉は全員が楽しみにしていたので、俺たちはさっそく用意された30畳はある豪華な部屋で浴衣に着替えて大浴場へと向かうのであった。
温泉は1階にも大浴場があるのだが、この最高級部屋が並ぶ最上階にも大浴場があるようだ。
「ここよ」
呂姫ちゃんが案内したのは廊下の突き当りであった。そこには男湯の青いのれんと女湯の赤いのれんに別れていた。
いたずら好きな呂姫ちゃんのことだから混浴しか用意していないなんてことはなかった。……いや待てよ。もしかしたら入口は別だけど中身は繋がっているなんてこと、ないよな。
俺は新井とともに青いのれんを潜り脱衣場へと足を踏み入れた。
そしてさっさと裸になるとガラス戸を開けて浴室へと入る。そこには100人くらい入れる内風呂とサウナがあった。
俺と新井は別行動だ。
別に会話しながらいっしょに行動するほど仲が良い訳じゃないし、新井の裸なんか見たくないからな。
なのでさっさとシャワーでお湯を全身に浴びて汚れを落とすと内風呂に入る。お湯は白濁していて硫黄の匂いがする硫黄泉だった。
扉の向こうの臥留子ちゃんと連絡が取れないのです。(`・ω・´)∩
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私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。