345話 コーヒーカップだけが残されていたのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
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長い石段を降りるとやはりドーム状の広い空間に出た。壁と床が石造りなのも東の洞窟といっしょだ。
「……ここもはずれか?」
「誰もいませんねっ」
そうなのだ。
ここも東の洞窟同様に誰の姿も見えないのだ。
だが、中央付近になにかがあるのが見えた。
「おい、なにかあるぞ」
「本当ですねっ」
「むう。椅子とテーブル」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃのう行ってみるかのう」
俺たちは石畳の床を歩きドーム空間の中央付近へと近づくのであった。すると食堂で見掛けるような普通のテーブルと椅子が一脚だけがあった。
いや、正確にはテーブルの上にコーヒーカップが残されていた。白いカップでウサギのキャラクターがプリントされているものだ。
……はて。どこかで見たような……。
俺は記憶をたどる。だが思い出せない。
「案内人さんのものでしょうかっ」
「だが不在」
「ふぉふぉふぉ。よく見るとコーヒーが少し残っているのう。……どれ、ほお、まだ温かいのう」
集子ちゃんがカップを触ってそう報告する。
「じゃあ、ついさっきまで案内人がここにいたってことになるよな?」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃのう。じゃがどこかに行ってしまったようじゃのう」
なるほど。
じゃあこの南の洞窟が当たりなのだろうか。
「じゃあ、この洞窟に宝が隠されていると考えていいんですねっ?」
恵ちゃんが集子ちゃんにそう尋ねる。
だが、集子ちゃんはむむむと唸って考え込んでしまった。
そしてしばらくすると口を開く。
「違うのう。案内人がいた洞窟に宝があるんではなくて、案内人がいる洞窟に宝があるんじゃのう」
説明を受けた。
宝は案内人とセットになっていて、常に案内人とともに移動するとのことだ。
……つまり、案内人が宝を持っているってことか?
「と、いうことはここははずれってことだな?」
「ふぉふぉふぉ。そうなるのう」
なんてことだ。
俺たちはため息をともにこの南の洞窟を出るのであった。
そして地上に戻る。東西南北4つの入口がある山の頂上部分だ。
「じゃあ次はどの洞窟にするんだ?」
「西でいいんじゃないですかっ?」
「もう一度、東に入るって考えもある」
「ふぉふぉふぉ。迷うのう」
そこで俺たちは話し合った。
秀子ちゃんが提案したようにもう一度、東の洞窟に入るって手もあるが、ここはやはりまだ入っていない洞窟にしてみようってことで結論づいた。
「じゃあ、西ですねっ」
「ああ。今度こそ当たりになるといいな」
そして俺たちは西の洞窟へと入った。苔むした石段を降りて行く。その風景は東や南の洞窟とまったくいっしょだ。
そして地下1階に降り立った。
「ああっ、なにか見えますよっ」
恵ちゃんが地下ドームの中央を指さした。すると確かにそこになにかがあった。平たく長方形のもので若干厚みがある。
色は隅の方は白いが大部分を占める中央部は花柄に思えた。
まだ温かかったのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。