341話 岩の魔物なのです。
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どうぞよろしくお願いいたします。
「大吉さんっ。ありがとうございますっ」
「感謝」
「ふぉふぉふぉ。助かるのう」
女神たちはそうお礼を言ってくれたのだが、俺はその際の表情は見ていない。当然だ。彼女たちは今、下着を身に着け服を着ている最中なのだ。
「秀子ちゃんっ。間違えていますっ。白い下着は私のですっ。秀子ちゃんのは青ですっ」
「ふぉふぉふぉ。儂も間違えたのう。儂のは黒じゃった」
なにやら艶かしい会話がされている。俺は思わずその様子を想像してしまい、ムラムラ感が湧き上がってくるのを必死で抑えている状態だ。
だが、やがてそれも終わる。
「お待たせしましたっ」
恵ちゃんのその言葉で俺は振り向く。すると恵ちゃんは黄色いワンピース姿、秀子ちゃんは青いTシャツ姿、集子ちゃんは黒い海賊コートの姿に戻っていた。これで一安心だ。
「服はちゃんと着られたな。じゃあ行くか」
「わかりましたっ。今度は服を盗られないようにがんばりますっ」
「同意」
「ふぉふぉふぉ。もうゴブリンは出んぞ。一種類の魔物につき登場回数は一回じゃ」
なるほど。
だとするともうゴブリンには遭わない訳か。なら服の方は大丈夫そうだな。
この森は本当に深い。
土の道にはときどき木漏れ日が差す場所もあったが基本、陰鬱とした深い森だ。なので見通しが悪いのでいつ魔物に出くわすか常に緊張を強いられる。
「坂道になってきたな」
「そうですねっ。登り坂ですっ」
そうなのだ。
先程までほぼ道は平らだったのだが、道は緩やかな登りになっている。森をそろそろ抜けるのだろうか。
森を抜けたら山だからな。もう麓といっていいのかもしれない。
「むう。なにかいる」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃのう。なにかおるのう」
秀子ちゃんと集子ちゃんが前方を指さした。
はて……? 俺にはなにも見えない。見えるのは道の両脇の深い森と道半分を塞いでいる大岩だけだ。
「本当ですねっ。なにかいますっ」
だが、見えていないのは俺だけのようだ。恵ちゃんまで前を指さしたのだ。
「……俺には岩しか見えんのだが」
「その岩がそうなのですっ」
「魔物」
「ふぉふぉふぉ。あの岩がそうじゃのう」
なんてことだ。
あの岩が魔物だと? どう見てもただの岩じゃねーか。
俺はそう思って岩を凝視していた。
う~ん。ただの岩だな。
そう思ったときだった。
岩がピクリと動いたのだ。最初は振動しているのかと思ったが、動きが徐々に大きくなり、やがてその岩は二本の足で立ち上がったのだ。
そして両手を頭上に掲げてウォーと吠えたのだ。
それは頭も胴体もあり、ちゃんと人型になっている。但し全身が岩でできていて身長は3メートルはあるものだった。
岩が動いたのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。