336話 ミスリル製なのです。
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「ふぉふぉふぉ。儂のおすすめは槍じゃのう」
集子ちゃんの言うのももっともだった。槍は柄の部分を握ってただ刺せばいい。いや、本当は槍術とかもあるのだから極めるには相当の訓練が必要なんだろうけど、剣や弓矢よりは敷居が低いってだけだ。
「……おい。……なんかこの槍、妙に軽いぞ」
「本当ですねっ。それに穂先が輝いていますっ」
「業物」
そうなのだ。
この槍は見た目からは考えられないくらい軽い。そして恵ちゃんの言う通り、刃の部分の輝きがただの刃物とは違っている。もしかしたら秀子ちゃんが言った通り”業物”なのかもしれない。
「ふぉふぉふぉ。その槍はミスリル製なのじゃ」
出た。それ、ファンタジー世界の金属じゃねーか。
軽くて硬くて魔法伝導が高い夢の金属だ。ファンタジー世界の武具や防具の材料としてあまりにも有名だ。
「すげーな。ミスリルかよ」
「これなら軽くて使っていても疲れませんねっ」
「軽量。持ち運ぶのも楽」
俺たち3人は集子ちゃん推薦のミスリル製の槍を装備することになったのだ。
ちなみに集子ちゃんの剣もミスリルとのことだ。
その後、時間的に昼飯頃だったので、俺たちは冒険の前に食事することにした。
食堂は船内にあった。
そしてなぜかすでに料理は出来ていたのである。
「……カレーか。好物だから素直に嬉しいな」
「カレーは美味しいですからねっ」
「でもなぜ、カレー?」
スプーンを手にした秀子ちゃんがそう集子ちゃんに尋ねた。すると集子ちゃんがドヤ顔になり、得意げに言うのである。
「ふぉふぉふぉ。船乗りと言えばカレーに決まっておるからのう」
なんだそれ?
……確か海軍カレーとかあったな。それに海上自衛隊は金曜日はカレーと決まっていると聞いたことを思い出す。
「海賊は海軍とは違うと思うけどな」
「ふぉふぉふぉ。細かいことはいいんじゃ。美味ければすべてよしじゃのう」
そんな訳もわからない理屈をこねながら集子ちゃんはカレーを食べ始める。で、もちろん俺たちも食べたのだが、正直美味かった。
■
それから俺たち4人は船を降りた。桟橋を歩き地上へと向かう階段を登る。階段は石造りで苔むした擦り切れた古びたものだった。
これもそれらしい設定に合わせて集子ちゃんが創造したのだろう。
そして俺と恵ちゃん、秀子ちゃんはミスリル製の槍、海賊キャプテン姿の集子ちゃんはミスリル製の剣を持っている。
やがて地上に出た。
出た場所は草原で背の低い草に覆われていた。そして遥か前方に深い森が見える。そしてその向こうにはこの島の中心でもある山が聳えていた。
ファンタジー世界なのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。