332話 世界の崩壊なのです。
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「ああっ。なにか変ですよっ」
恵ちゃんが慌てたように口走る。見ると2人の秀子ちゃんたちの様子がおかしい。身体中をガクガクさせて震えているのだ。
寒そうでもないし、恐怖にかられている様子でもない。しかし顔面は蒼白で両手で自分を抱きしめている。
「しゅ、秀子ちゃん、大丈夫ですかっ?」
心配した恵ちゃんが両手を伸ばしそれぞれの秀子ちゃんの肩に触れようとする。
だが、それはできなかった。
掴んだはずの恵ちゃんの腕が秀子ちゃんたちの身体をすり抜けてしまったのだ。
「「世界が崩壊する」」
ハモって大変なことを口にする2人の秀子ちゃん。そしてその姿はだんだんと透き通って行く。
すると景色も変わった。店内に急に霧が発生したみたいに白くなり商品の衣服、棚などの什器、試着室などが視界から消えていく。
「はわわっ。これは異常事態なのですっ」
どうやら俺は無意識に世界崩壊のスイッチを押してしまったようだ。2人の秀子ちゃんの帽子を逆に被せることがトリガーになっていて、それを実行してしまったようなのだった。
「このままだとどうなるんだ?」
「私にはわかりませんっ」
「「完全消去。……まさかこんな方法だったとは知らなかった」」
最後までハモりながら2人の秀子ちゃんたちは完全に見えなくなった。そして恵ちゃんの姿も消えた。なのでたぶん俺の姿も消えているのだろう……。
■
……目が覚めた。
横たわっている身体全体がゆら~りゆら~りと揺れている。
視界に入るのは澄んだ青空と白い雲。
どこで横たわっているのかと左右を確認すれば木製の床。そのときに背の高い木の柱が3本見えた。
……どこだ、ここ?
「大吉さんっ。気が付きましたかっ?」
恵ちゃんだった。服装はさっきの被服店で試着していた黄色いワンピース姿だった。
そして見回すと秀子ちゃんもいた。青いキャップに青Tシャツにデニムのショートパンツ姿でひとりだった。
「私は戻った」
どうやら分裂していた秀子ちゃんたちはひとつの肉体に戻ったようだ。
そして俺は立ち上がって更に見回す。周りは白い波頭が広がる大海原だった。
……て、ことは船?
どうやらここは船の甲板の上のようだ。しかも木造船。マストもあるし真っ黒な帆が風を受けて膨らんでいる。つまり帆船に乗っているようだ。
……しかし普通は帆は白じゃないか?
「ここは船なのか?」
俺は甲板を見回す。だが船員の姿がない。マストを見上げてもやはり見張りの姿もない。
「そうなのですっ。私たちはいつの間にかこの船に乗っていたんですっ」
「だが船員が不在」
なるほど無人の船って訳か。難破船かなんかか?
「船内は調べたのか?」
「まだですっ。私たちもついさっき意識が戻ったばかりなのですっ」
「船内未調査」
じゃあ、船の中を調査しようかと相談し始めたときだった。
船室に入る扉がガチャリと開かれたのだった。
世界が崩壊したのです。(`・ω・´)∩
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私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。